「テレビでは見られない」面白さに挑戦した日本映画!黒澤も小津も出てこない邦画名作選-映画秘宝
一般家庭へのテレビの普及もあり、映画界が斜陽にあった時代、映画でしか観られないものをという思いで、ときに過剰すぎるほどの演出に果敢に挑戦した映画人たち。そんな人々の手掛けた、邦画界のアウトサイダー的な作品の数々が、映画専門雑誌「映画秘宝」のムック本で紹介されている。
日活ロマンポルノ、また50周年のピンク映画の特集上映など、日本映画界の斜陽期を支えた作品群を振り返る機会の多い今年。「映画秘宝EX 鮮烈!アナーキー日本映画史1959~1979」には、テレビに負けてなるかと、旧態依然のメロドラマや単純な勧善懲悪といった仕組みを打ち破り、ときにはっその過激さゆえに、評価されなかった作品たちが登場する。
そのラインナップは、西部劇のテイストを取り入れ、まじめな人間ドラマ以外の戦争映画の道を拓いた岡本喜八監督作『独立愚連隊』に『網走番外地』、『子連れ狼 三途の川の乳母車』『犬神家の一族』『太陽を盗んだ男』など、有名無名を問わないアウトローな「娯楽」作品ばかり。怪奇特撮や東映仁侠映画、アクション、SF、ホラー、スケバン、何でもアリな映画のオンパレードに、日本にもここまで常識を超越した作品が存在したのかと、感激すること必至だ。
作品だけでなく、『座頭市物語』『斬る』といった勝新太郎と市川雷蔵の黄金時代、現在ではめずらしい二本立て興行やピンク映画の誕生、ATG映画、東映実録路線、空手映画ブームなどといった、各時代のムーブメントに関するコラムも充実。黒澤明監督や小津安二郎監督作品など、ある種正統な名作選とは一線を引くものではあるが、確実に日本映画の歴史を支え、現代へと通じる影響を残してきた作品群であることは事実であり、映画史を振り返る上で重要な作品・知識の入門書としても最適といえるだろう。(編集部・入倉功一)
「映画秘宝EX 鮮烈!アナーキー日本映画史1959~1979」は洋泉社から発売中 1,575円(税込み)