ケン・ローチ監督、イギリスの検閲機関を批判「汚い言葉にとらわれすぎ」
新作映画『ザ・エンジェルズ・シェア(原題) / The Angels' Share』をカンヌ国際映画祭へ出品しているケン・ローチ監督が、イギリスの映画検閲機関であるBBFCから、この映画の中に含まれる罵(ののし)りの言葉を削除したらレート「15」をつける、と申し渡されていたことを明かした。
ケン監督と言えば、2006年に映画『麦の穂をゆらす風』でカンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを受賞し、コンペ部門で何度も出品している常連のベテラン監督。新作『ザ・エンジェルズ・シェア(原題)』ではスコットランドのグラスゴーを舞台に、若くして職にあぶれた父親が、ひょんなことからウイスキーのテイスティングで才能を発揮していくというコメディーを描いている。毎回、社会を冷静な目で捉えながら描いていくケン監督だけに、今回の作品も期待がもたれているが、映画のなかに出てくる拷問シーンや罵りなどの言葉が理由となり、本国イギリスでは18歳未満の鑑賞が禁止となるレート「18」が付けられてしまった。さらにケン監督に対し、検閲機関のBBFCは15歳未満の鑑賞禁止となるレート「15」に緩和するために、劇中に出てくる罵りの言葉を減らすよう指摘されたという。
ケン監督はこのことについて、カンヌ国際映画祭のなかで、「イギリスの中流階級は、いわゆる汚い言葉というものにとらわれすぎだ。悪い言葉とは人を騙すようなごまかしの言葉であって、彼らはそういうものは気にしない。そのくせ、チョーサーの時代に使われていたような古めかしい罵り言葉はカットしろと言う」と批判。BBFCは、罵りの言葉より「政治で使われる二枚舌に注意を払うべき」と語った。
映画は、キャストの英語が強いスコットランド訛りのため、英語字幕が付けられている。ケン監督やプロデューサーによると、これは英語を母国語としない、北部なまりが聞き取りづらい人も多く暮らしているイギリスで全国的な公開を視野に入れているためだそう。このプロデューサーもBBFCに対し、「イギリスに多様性を求めているのならこの映画や、舞台となったグラスゴーがそれを表しているし、言葉遣いには様々あって、そういう多様な言葉が認められるべき。検閲されるべきではない」と批判を寄せている。(竹内エミコ)