実力派女優たちがすっぴんで熱演! 震災直後の気仙沼で撮影されたむき出しのドラマ
小林政広監督の最新作『ギリギリの女たち』で3姉妹を演じた渡辺真起子、中村優子、藤真美穂が、東日本大震災後の宮城県気仙沼市で行われた本作の撮影を振り返った。
『愛の予感』『春との旅』などで世界的評価の高い小林監督は、気仙沼市唐桑町に居宅を所有。その縁もあり、本作の撮影は昨年8月に気仙沼で行われた。津波被害の傷跡がまだ生々しかった当時の気仙沼の様子を「言葉が出なかった」と振り返る三人。だが、「(宿泊先の人が)孫ができたと本当に喜んでくれた」と中村が語る通り、地元の人たちはキャストや撮影スタッフを温かく迎え入れてくれたという。
東日本大震災をきっかけに、音信不通だった3姉妹が再会。がれきの山を目の当たりにした三人は家族の絆を見失い、互いを傷つけ合う。しかし泣いて、笑って、喧嘩して、心の中を吐き出した女たちは再び立ち上がる。本作は、そんな女性のたくましさ、力強さを描き出す人間賛歌である。
極限状態の中、すっぴんも辞さない女優同士のむき出しの感情が観客にヒリヒリと伝わってくる本作。渡辺は「化粧をして美しくしていなきゃいけない役じゃないので」と振り返り、「でもぶっちゃけ、あまりにもすごい形相をしていたのでビックリしましたけど」と豪快に笑う。藤真も「そもそもが化粧品を買える状況ではなかった。そんなの買う暇があったらガスを通せ、電気を通せという感じですから」と同意。さらに中村が「すっぴんだと心がすさんでいる感じが出てくるんですよ。逆にきれいにメイクをした三人が出てきたら、観ている方の心は明らかに離れてしまいます」と付け加えた。
津波被害に遭った景色の生々しさに、精神的ショックを受ける観客もいるのではないかとの危惧から、劇場公開がなかなか決まらなかったという本作。しかし渡辺は、「撮影が終わって帰る日の朝に、地元の方が、震災の報道写真が載っている写真集をわざわざ届けてくださったんです。これをいろんな人に伝えてほしい、僕たちのことを忘れないでほしいと。そういうことなんだと思います」とその思いを語った。(取材・文:壬生智裕)
映画『ギリギリの女たち』は7月28日より渋谷・ユーロスペース、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開