自殺防止対策から学ぶ被災者の心のケア「よくここまで生活を戻したね」と励ますことが希望のシグナル!
16日、ポレポレ東中野で映画『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』初日舞台あいさつが行われ、監督の都鳥伸也とカメラマンの都鳥拓也が登壇した。
映画『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』フォトギャラリー
これまで『葦牙-あしかび- こどもが拓く未来』『いのちの作法』などの意欲作をプロデュースしてきた都鳥伸也、拓也は双子のフィルムメーカー。岩手県を中心に活動する彼らは、本作で自殺防止対策に取り組む秋田県内の団体が集まったネットワーク集合体「秋田こころのネットワーク」に所属する人々にスポットを当てた。
日本では現在、年間3万人近くの自殺者が報告されており、その中でも秋田県は2010年、15年連続で自殺率日本一を記録。「自殺者の心理の問題にどうやって対策を立てていけばいいのか。悩んでいる人も多いと思います。でもそれはやはり人とのつながりだろうと考えています」と伸也監督が語る通り、映画の中では、彼らの相談に乗るなどして、「死にたい」と思う気持ちを少しでもやわらげるために活動する人々の奮闘が描かれている。
そんな彼らを追っている最中に東日本大震災が起きた。伸也監督は「震災を映画に織り込むかどうかは悩みました。テーマがぶれるのではないかと思ったんです。でも、震災支援も、自殺防止対策もやっていることは変わらない。人を支えるというテーマに尽力し、震災の場面を積極的に取り入れることにしました」と制作過程を振り返る。そうした紆余(うよ)曲折を経て、完成したのは“「あれもこれも失った」と考えるのではなく、「よくぞここまで生活を戻したね」と褒めて、励ますことこそが希望のシグナルなのだ”というテーマが色濃く反映された本作だ。
本作のエンドクレジットには、多くの映画関係者、そして個人の名前が協力者として連ねられている。「この映画が完成して上映までこぎ着けられたのは、いろいろな人が支えてくれたから。人間のつながりの素晴らしさを実感してもらいたいです」としみじみ語る伸也監督らに会場からは大きな拍手が寄せられた。(取材・文:壬生智裕)
映画『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』はポレポレ東中野にて公開中