ボクシングで国体出場経験者「グラップラー刃牙」の板垣恵介氏、モハメド・アリは最強の象徴
2日、映画『フェイシング・アリ』公開記念トークショーが、アップリンク・ファクトリーにて行われ、人気格闘マンガ「グラップラー刃牙」シリーズの作者・板垣恵介氏が出席。モハメド・アリや、格闘技に対する熱い思いを語った。
本作には、アリと死闘を演じた10名のボクサーが登場するが「すべてのボクサーが一番人生で輝いていた瞬間がアリとの対戦だったということが、この作品で改めて認識できた」と板垣氏は語る。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」という華麗なボクシングでファンを魅了したアリだったが「初期の彼には名声を得たいという欲もあったが、ベトナム戦争で徴兵を拒否してから、彼は民族の代表という意識が感じられた。スポーツマンというより、大きなものと戦う戦士のようだった」とアリの魅力を、ボクサー以上の存在として尊敬していることを明かした。
また「長く最強の象徴であり、決して卑怯なことをしない。もちろん(自身が描く)漫画にも大きな影響を受けたているけれど、困ったときに、アリだったらどうするだろうって考えるなど、生き方を教えられた」と、その存在の大きさを強調する。そんなアリだが、漫画の題材としては「政治的な色が強すぎるからなぁ~」と心情を吐露した。
自身もボクシングで国体出場を果たしているが「僕の場合は、一番いい時期に(漫画家へ)シフトチェンジできたけど、ボクシングを続けていると、どこか壊れちゃうんだよね。思いっきり頭に(パンチを)もらうと『こりゃスポーツじゃないな』って思う。でも、アマ時代に試合に勝ったときのうれしさは、漫画が売れた時の比じゃないんだよね」と本音をもらす一幕に、客席は笑いに包まれた。
本作は、伝説のボクサー、モハメド・アリの軌跡を追ったドキュメンタリー映画。リング上で彼と死闘を演じた10人の対戦相手のインタビューと、白熱の試合映像から、偉大なチャンピオンの生き様をひも解く。(磯部正和)
『フェイシング・アリ』は渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマほか公開中