若松孝二監督、東電に宣戦布告!「本気になってケンカ」とベネチアでも若松節さく裂!
第69回ベネチア国際映画祭
第69回ベネチア国際映画祭の第2コンペティション部門オリゾンティに選出された若松孝二監督『千年の愉楽』が現地時間4日、公式上映された。会場には若松監督と共に高良健吾、高岡蒼佑、原田麻由が立ち会い、観客から温かい拍手を浴びていた。
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若松監督のベネチア参加は初めて。『キャタピラー』などでベルリン、『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で本年度のカンヌに参加しており、これで世界三大映画祭を制したことになる。
同作品は中上健次の同名小説が原作で、紀州を舞台に、高貴だが汚れた血を持つ中本家の男たちの生と死を描いたもの。公式上映に続いて行われた会見で若松監督は、本作に挑んだ理由について、「中上の小説はあまり読んでいなかったけど、昔から飲み仲間で。取っ組み合いのケンカになったこともあったけど、いつか彼の小説を一本撮ってみたいと思っていた。僕ももう76歳で、先が長くないのでね。いまのうちにと老骨にむちを打って作りました」と説明した。
最初のうちは穏便に話していた監督だが、しだいに熱を帯びてきたのか若松節がさく裂。きっかけは、海外の記者からの「あなたは連合赤軍など政治的なテーマをよく取り上げており、今回は部落差別問題に挑んだ。映画を通じて政治的な革命ができると思いますか?」という質問だった。
若松監督は「たかだか映画で何ができるかわかりませんが、僕はせめて映画で戦うしかない。連合赤軍や三島由紀夫事件は当時の若者が何故そうなったのか、国が表に出そうとしない。今回の差別問題もそう。そして今、どうしてもやりたいのは東電の話。誰もやろうとしないから本気になってケンカしてやろうと思っています」とベネチアでまさかの宣戦布告だ。
これには布石があるそうで、某大手映画会社で原発事故を背景にした作品の監督を依頼されたが、規制が多く断ったことがあったという。若松監督は「“東電”という言葉を出すのをやめてくれと。じゃあ、せめて東電に向かってひまわりの花を投げさせてくれと言ったら、それもダメだと言われたから降りた。この映画で1億円ぐらいもうけて、好きな映画を3本撮ろうと思っていたけどね」とニヤリ。最後は「映画は予算を掛けなくてもできる。これからも自分の好きな映画しか撮りません」と高らかに語り、気持ちよく会見場を後にしていた。(取材・文:中山治美)
第69回ベネチア国際映画祭は9月8日まで開催