富士フイルム、映画フィルムを生産中止へ…デジタル化の波に逆らえず
1934年の創業以来、映画フィルムを取り扱っていた富士フイルム株式会社が、上映用をはじめとする映画フィルムの生産を中止することが明らかになった。ただし、アーカイブフィルムの生産は継続するなど、今後はデジタル化の波に合わせる形で映画事業を続けていくという。
映画フィルムは、撮影用や編集用、上映用など用途ごとに使い分けされており、同社での生産中止が決定したのは、上映用ポジフィルム、撮影用カラーネガフィルムなど、アーカイブフィルムを除いた映画フィルム。同社担当者によると、デジタル化の推進が最大の理由になっているといい、近年の3D映画の隆盛で映画界のデジタル化が加速したことも要因になっているとのこと。具体的な生産中止時期については現在調整中だという。
1934年の創業時から映画フィルムの国産化を理念として掲げ、業界内で35パーセントのシェアを占めていたという同社の事業縮小は、今後さまざまなところに影響を与えることが予想される。これまで同社は世界中に二つしかない映画用フィルム全種類を生産するメーカーだったが、今回の決定に伴い、今後、全種類を供給できる会社は米イーストマン・コダック・カンパニーのみとなる。(数字は富士フイルム提供のもの)
今後の同社は、保存用のアーカイブフィルムやカメラ用レンズ、色調整システムなどで映画事業を継続していく見込み。とりわけ、同社が開発したアーカイブフィルム「ETERNA-RDS」は、映画業界に貢献した技術や技術者に贈られるアカデミー賞のアカデミー科学技術賞を受賞。現在では20世紀フォックスとソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの全作品に採用されるなど、映画フィルムを語る上では欠かせないアイテムの一つとなっている。
デジタル化が推進されているとはいうものの、フィルム上映を好んでいる映画ファンは多く、最近では往年の名作をオリジナルニュープリントで上映する「午前十時の映画祭」が人気を集めていることも記憶に新しい。また、フィルム撮影にこだわる制作者もおり、映画『ダークナイト』で知られるクリストファー・ノーラン監督は一貫してデジタル化に批判的な姿勢を見せている。(編集部・福田麗)