クリストファー・ノーラン監督が初めて『ダークナイト』シリーズ3部作について明かす
映画『ダークナイト』シリーズ3部作のクリストファー・ノーラン監督が、 「バットマン」との出会いから、『バットマン ビギンズ』製作を語った。
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「バットマン」との出会いについて「僕らの世代は、アダム・ウェスト主役のテレビシリーズ『バットマン』(1966~1968年)を観ていた。当時(再放送時)5歳だった僕にはその番組のユーモアや大げさな演出などの概念は全くなく、キャラクターだけに注目し、それからコミック作品に興味が移っていった」。
『バットマン』フランチャイズについて「リチャード・ドナー監督の映画『スーパーマン』は、それまでの『スーパーマン』作品と違い独創性に富んでいた。今でも、クリストファー・リーヴが空を飛び、マーロン・ブランドがナレーションする予告編が忘れられない。ティム・バートンの『バットマン』シリーズも成功したが、あれはティム・バートン色の映画だ。僕はリチャード・ドナーの巨大なアクションバージョンを、『バットマン』シリーズに当てはめることにした」。
影響を受けた映画について「大きな影響を受けたのは『007』シリーズだ。初めて観た映画『007/私を愛したスパイ』によって、『007』シリーズが様々な見解(登場人物によっての違い)からスケールの大きなアクション映画として描かれていることに気付き始めた。それは世界中を駆け回ったりしながら、いろいろな見識で観客を引き込んでいた。我々も、映画『ダークナイト ライジング』で飛行機を作り、飛行機から飛び降りることで、観客も一緒に引き込まれていく設定にした」。
主役ブルース(クリスチャン・ベイル)は、心身のトレーニングをデュカードから受けるが、後に彼が“影の同盟”のリーダー、ラーズ・アル・グールと知る。このラーズは、9.11アメリカ同時多発テロの影響があるのか。「『007』シリーズでも60年代に冷戦の恐怖を扱い、核のテロが描かれていた。僕らは、9.11後に映画を製作する上で、 我々自身もテロの恐怖を正直に描き、そんな恐怖がゴッサムシティに降り掛かる形で反映させた。僕にはゴッサムシティ自体が、ある意味ニューヨークのハイパーバージョンの都市に思える。そういった意味で、悪役には真実味があり、悪役の哲学が観客にも理解できなければならなかった」と述べた。
ブルースがパーティーでゲストを追い出す印象深いシーンについて「クリスチャンの演技は何か解き放たれた感じで、あのときのブルースは3つの顔を持っていた。まずバットマンとして顔、次に執事アルフレッドや恋人レイチェルさえも知らない顔、そしてプレイボーイの顔。彼はあのシーンで3つの顔すべてを、自分のライフスタイルを皮肉り(怒り)ながらさらけ出していく。彼のエネルギーと抑えられた怒りが表現され、本当に素晴らしかった」と絶賛した。
(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)