原発問題に切り込む園子温『希望の国』に中東諸国も危機感!プロデューサーが質問攻めに!
アラブ首長国連邦で開催された第9回ドバイ国際映画祭で現地時間14日、園子温監督『希望の国』がアジア・アフリカ長編コンペティション部門で上映された。現地入りを予定していた園監督は、「極度の精神的疲労」によりドタキャン。しかし、原子力開発問題はアラブ諸国でもひとごとではないため、会場には多くの観客が詰め掛けた。
『希望の国』は、原発事故で揺れる架空の町を舞台にした社会派ドラマ。園監督が福島で取材したことをベースに、福島第一原発事故の記憶と教訓を忘れぬようにと日本人へ警鐘を鳴らした意欲作だ。
上映前、不在の園監督に変わってマイクを握った國實瑞惠プロデューサーが「わたしたちの誰にも責任が取れない原発というゴミを、未来に残したまま死ねないという気持ちでこの映画を作りました」とあいさつすると、会場から大きな拍手が起こった。
アラブ諸国では急激な都市の発展で電力需要が増え、同じアラブ首長国連邦のアブダビでは、韓国企業連合による原子力発電所の着工が決定。原子炉4基の建設が来年から開始される予定だ。
上映後、國實プロデューサーと汐巻裕子プロデューサーは、自分たちの未来に起こりうる現実的な話に危機感を感じた地元の観客から「政府関係者にこの映画を観せたい」と声を掛けられたり、福島原発事故後に住民の反原発運動が起こっているという原発保有国インドの観客から、映画の内容について質問攻めにあったりといった歓迎を受けた。
両プロデューサーは、原発タブーに触れている同作品の国内での製作資金がなかなか集まらず、海外企業に出資を依頼するなど奔走した経緯があるだけに、中東での予想だにしなかった好反応に感激しきり。それだけに園監督が参加しなかったことははなはだ残念だが、國實プロデューサーは「ドバイでこの映画を上映した意義はあった」と、確かな手応えを感じていたようだった。(取材・文:中山治美)