細田守監督『おおかみこども』中東で12歳未満鑑賞不可 子どもたちの入場めぐり小競り合い
細田守監督のアニメーション映画『おおかみこどもの雨と雪』が現地時間14日、第9回ドバイ国際映画祭で招待上映された。金曜日はイスラム教国では休日にあたり、劇場には多くの家族連れが列を作った。しかし生死などに触れている同作品は現地で「大人向けの内容が含まれている」と判断されて12+(12歳未満観賞不可)となり、子どもたちの入場をめぐって小競り合いが起きてしまった。
同映画祭ではイスラム教にのっとって独自の観賞ガイドラインを設けており、昨年上映された沖田修一監督『キツツキと雨』も露天風呂で役所広司と小栗旬の全裸シーンがあることからR15+(15歳未満観賞不可)。
今年も、三池崇史監督『悪の教典』は伊藤英明の全裸に加えて、教師役の平岳大と生徒役の林遣都の同性愛シーンが特に問題視されてR18+(18歳未満観賞不可)。園子温監督『希望の国』も原発問題や死を描いているため「大人向けの内容」のR15+で上映されている。
ただし『おおかみこどもの雨と雪』の場合は、まだまだ海外ではアニメ=カートゥーン(子ども向けマンガ)という認識が強いため、差別化を図る意味でも12+と設定したようだ。
残念ながら、細田監督は仕事のためにドバイ入りできなかったが、細田作品への関心は現地のアニメファンの間でも高まっている。ドバイでの日本文化発信基地となっている紀伊國屋書店ドバイ店のOTAKUコーナーには、『おおかみこどもの雨と雪』の関連書籍が並んでおり、映画祭での上映が決まってから売れ行きも上々だと言う。
同書店には3,000冊のMANGAコーナーやジブリグッズも取りそろえているのだが、OTAKUコーナーはとりわけアートの勉強をしている人たちが「日本のアニメやコミックには刺激を受ける」と買い求めることが多いという。
また『おおかみこどもの雨と雪』は、先ごろ発表された第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で、『アシュラ』や『グスコーブドリの伝記』と並んで優秀賞を受賞した。ドバイでの上映も、細田監督らゲストが一人も来ていないにもかかわらず、自然と拍手が湧き起こるほど大盛況で、今後さらに海外でも評判が広がっていきそうだ。(取材・文:中山治美)