ミニシアター文化をめぐる現実は厳しい…シネマライズ代表が明かす現状
1980年代から始まったミニシアター文化の一角を成す渋谷・シネマライズを経営する頼光裕氏が、ミニシアターをめぐる現状について率直な意見を述べた。かつては渋谷の街に多くあったミニシアターもここ数年で急激に数を減らしているが、その中で映画館運営を続けるということの醍醐味を語っている。
シネマライズで現在公開されている映画『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』フォトギャラリー
1986年にオープンし、以後渋谷ミニシアター文化の中核を担ってきた同館。現在上映されているのは、シネマライズが自社で買い付けたドキュメンタリー映画『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』だ。同社にとって3作目の買い付け作品となるが、頼氏は「積極的に買い付けをしているわけではないんです」と明かす。一時に比べてアート系配給会社が激減したことで良質の作品であっても誰も手を出さなくなり、そうした中でシネマライズに売り込みがあったというのが実情だという。
もっともシネマライズにとっても買い付けは「もうけようとは思いませんね。というより、マイナスにならないというのがせいぜいでしょうか」というもの。それほどまでに現在のミニシアターをめぐる状況は難しい。事実、シネマライズも2010年に3スクリーンから1スクリーンに縮小することを余儀なくされている。
「一時期まで、ウチでやっている作品に外れはありませんでした。それほどまでに作品を厳選していたんです。でも、今はもう良質のインディペンデント作品自体が少なくなっている」と縮小の理由を明かした頼氏。作品数が少なくなっているために、これまではミニシアターごとにあった特色も薄くならざるを得なかったといい「でも、それはもう言っても仕方のないことなんですね。映画界も以前のように景気がいいわけではないから」と映画業界の現状を憂う。
だが、だからこそ現在上映中の『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』のように、知名度は低くとも良質な作品を公開できる場をいつまでも提供してほしいというのは、映画ファン共通の願いのはず。「今、映画館をやるのはつらいことの方が多い」と渋い顔で明かす頼氏だったが、かつて同館で上映した『ポンヌフの恋人』を観た一人がそれをきっかけに映画業界に進んだという話をするときは「そういうふうに人生を変えられちゃった人もいるからね」と笑い、「それが映画館をやる醍醐味だよ」と誇らしそうに語っていた。(編集部・福田麗)
映画『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』は上映中