政治圧力には屈せず!自宅軟禁アイ・ウェイウェイ氏が審査委員長を務めたロッテルダム国際映画祭、閉幕
オランダで開催されていた第42回ロッテルダム国際映画祭が、このほど閉幕した。コンペティション部門の審査委員長を務めたのは、度重なる政府批判により中国当局によって自宅軟禁状態にある現代芸術家アイ・ウェイウェイ氏で、現地入りしないまま審査を行うという特別措置が取られた。
アイ氏は社会運動家としても知られており、2008年の四川大地震の際には、多数の子どもたちが校舎の下敷きとなり犠牲になったのは、建築に問題があったからだと政府の責任を追及。以降、国家権力との仁義なき戦いを続けており、2011年には脱税を理由に逮捕された。釈放された現在も監視下に置かれ、自宅のある北京から離れることは許されないという。
同映画祭は、「映画監督としてのアイ氏をリスペクトしている」とアイ氏の支持を宣言し、昨年はアイ氏の特集上映を企画してロッテルダムへの招聘(しょうへい)を画策。だが、その計画は実現しなかったため、今年は審査員に任命し、海外メディアにアイ氏が置かれた状況を知らしめると同時に、中国政府へさらにプレッシャーをかけた。
映画祭を舞台にした同様の抗議運動は、2011年のベルリン国際映画祭が、反政府的としてイラン政府から禁固6年の判決を受けたジャファル・パナヒ監督を審査員に選んだ前例がある。その際、パナヒ監督は映画祭を欠席したが、今回のアイ氏は北京で審査に参加した。
ロッテルダム国際映画祭によると、映画祭スタッフがコンペティション作品16作をDVDの形で北京まで運び、審査を行ったという。ただし、他の4人の審査員との審査会議は、当初のSkype作戦が通信事情の不具合により行えず、アイ氏の作品コメントをスタッフが受け取り、それを踏まえた上で他の審査員らが協議する形をとった。
ロッテルダムでは今年、同じく映画監督への締め付けが厳しくなっているイラン作品の特集上映を行い、同国からの亡命を余儀なくされているバフマン・ゴバディ監督の映画『サイの季節』などを上映して政府を挑発した。その結果、現地入するはずだったイランのゲスト1人に出国許可が降りなかったという。それでも政治の圧力に屈しない同映画祭の姿勢は、多くの映画人の励みとなりそうだ。(取材・文:中山治美)