アグネス・チャン、涙…アフリカ児童兵士の過酷な現状を訴える
9日、シネマート新宿で映画『魔女と呼ばれた少女』が初日を迎え、アグネス・チャンがトークイベントに来場、アフリカで起きている児童兵士の実態を涙交じりに訴えた。
本年度アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた本作は、紛争が泥沼化するコンゴ民主共和国を舞台に、アフリカの児童兵士問題をテーマにした衝撃作。本作の主人公となる少女コモナは、12歳にして反政府軍に拉致され、無理やりに児童兵士にされてしまう。しかも兵士になるための証として、コモナは自らの手で両親を銃撃することを強いられる。
そんな狂気の世界で生きていく少女の過酷な運命を、キム・グエン監督自らストリートで見出したというラシェル・ムワンザが圧倒的な存在感で体現。力強いまなざしが印象的な彼女の演技は、アフリカ女性初となるベルリン国際映画祭銀熊賞(主演女優賞)をもたらした。
「悲惨な思いをする子どもたちがこの世からいなくなるため」にボランティア活動、文化活動を行っているアグネスは、「かなり衝撃的な内容。スーダンのダルフールの児童兵士のことを思い出してしまいました。主演の女優さんの自然な演技が感動的でした」と本作に感銘を受けたようで、さらに「実話に基づいたフィクションですが、児童兵士の現状を一人の少女に託している。絶対に児童兵士はいけない、平和って大切だなと思いました」と思いを新たにしたようだ。
その後、スーダンの児童兵士の実情を語るアグネス。銃の軽量化により、子どもが銃を持たされるようになった話。体が軽いからと地雷撤去に駆り出され、爆破事故が起きた話。「貧しいわたしたちを笑った」とアグネスに詰め寄った少年が後で謝りに来た話。焼け野原の村で、生き残った子どもが友だちのお墓を作った話。過酷な現実を伝えるうちに、アグネスの瞳からは自然と涙がこぼれる。「この映画には、戦争をしている子どもたちが直面している問題がいっぱい入っています。皆さんの意識を少しでも高めれば、一人でも多くの子どもたちが救えるはず」と改めて会場に訴えかけるアグネスであった。(取材・文:壬生智裕)
映画『魔女と呼ばれた少女』はシネマート新宿ほか全国順次上映中