『日本の悲劇』日本初上映!仲代達矢、自殺して息子に年金の不正受給をさせようとする親を熱演!
仲代達矢主演映画『日本の悲劇』がこのほど、開催中の第8回大阪アジアン映画祭で日本初上映された。上映後は小林政広監督が観客と質疑応答し、完成作を観た仲代から「役者冥利に尽きる」と言わしめたことを明かした。
同作品は『春との旅』に続いて、仲代&小林監督が再タッグを組んだ意欲作。精神を病んで職と家族を失った息子のために、ガンで余命いくばくもない父親は自殺を試み、息子に年金の不正受給を持ちかけるという衝撃的な内容だ。木下恵介監督が同名タイトルの作品を1953年に発表しているが関連はなく、むしろ意識したのは仲代主演の名作『切腹』(小林正樹監督、1962年製作)だという。
小林監督は「仲代さんを今度はどう撮るか? と考えたとき、演出の手掛かりとして黒澤明監督作など旧作を見直したんです。その中でヒントになったのが『切腹』。舞台劇のような脚本、現実と回想が交互に展開する構成、シネマスコープでの撮影などを取り入れました」と説明する。
とりわけ話題になったのが、スクリーンに映るのは仲代の後ろ姿ばかりという大胆な撮影だ。仲代のウリでもある眼ヂカラを封印するかのような挑戦的な試みに、思わず司会者から「仲代さんから怒られませんでしたか?」という質問が出た。
小林監督は「最初は何も言わなかったが、撮影3日目ぐらいからカメラの方を振り向くようになり、4日目についに『また後ろからか』と(苦笑)。さすがに完成した作品を観ていただくとき、今回はダメかなと思っていたが、仲代さんから『こんなに後ろ姿から撮ってもらって役者冥利に尽きる。良い物を作ってくれてありがとう』と言っていただいた」とうれしそうに振り返った。
映画『日本の悲劇』は8月下旬よりユーロスペース、新宿武蔵野館ほか全国順次公開