天皇陛下の戦争責任にまで言及した映画に外国人記者から「右翼団体に批判されないのか」との声も…
24日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で映画『戦争と一人の女』記者会見が行われ、江口のりこ、永瀬正敏、井上淳一監督が外国人記者たちの質問に答えた。
本作は、坂口安吾による同名小説を原作に、戦争末期、不感症の女(江口)と虚無的な作家(永瀬)、そして中国戦線から身も心も病んで帰国した元兵士(村上淳)たちの運命が交錯していくさまを暴力とエロスを交えて描き出した作品。
天皇陛下の戦争責任にまで言及した本作について、外国人記者からは「右翼団体から批判されることはないのか?」との意見も飛び出したが、井上監督は「この映画のことが知られれば、何かを言われるかもしれないが、まだ知られていないので、何も言われていない。言われるくらいの映画になりたいと思います」と返した。
俳優たちに対しても、「この映画に参加することで、これからの将来の仕事に対しての心配はなかったのか?」との質問が投げられたが、江口は「わたしはなかった」とキッパリ。「どの仕事をやるにしても、失敗したら次の仕事にはつながらないし、成功したら次につながる。それはどの作品でも同じ」と付け加えると、会場からは拍手が。永瀬も「同じです」と続けた。すると井上監督は「今までどのインタビューでも、今のような質問は出てこなかった。改めて日本が右傾化していると外国の方から思われているんだなと思った」と見解を述べた。
司会者から、本作の予算は1,200万円、10日で撮影したとアナウンスがあると、会場からは驚きの声が。それに対し、井上監督は「ここ30年、日本の戦争映画、もしくはマスコミが避けてきた天皇の戦争責任、いわゆる自虐史観といって攻撃される日本がアジアでやった悪いことを、低予算で、自分たちの好きなことができるからこそ、きっちりと描こうと思った」と思い入れを語った。
また、坂口の原作では、村上が演じた戦場での精神的後遺症から山奥に女を連れ込み、犯し、殺し続ける帰還兵というキャラクターは存在していなかったことから、記者から日本語で「なぜ原作にない表現を付け加えてまで、日本を侮辱するような表現を行ったのでしょうか?」という質問が。井上監督は「あえてやりました。日本がやってきた、よその国を侵略し、植民地にして、殺したり、犯したりしたことをなきものにしようとする風潮だけは、絶対に許せないと思います」と力を込めた。(取材・文:壬生智裕)
映画『戦争と一人の女』は4月27日よりテアトル新宿にて公開