自殺や近親相姦…ヘミングウェイ家の呪いから逃れようとした女優のドキュメンタリーとは?
文豪アーネスト・ヘミングウェイの孫娘で、ウディ・アレン監督作品『マンハッタン』などで知られる女優のマリエル・ヘミングウェイに迫ったドキュメンタリー映画『ランニング・フロム・クレイジー(原題) / Running from Crazy』がサンダンス・ロンドン・フィルム&ミュージック・フェスティバルで上映された。上映後には、バーバラ・コップル監督による質疑応答も行われた。
マリエル・ヘミングウェイ出演映画『映画と恋とウディ・アレン』場面写真
ヘミングウェイ家には自殺者が多く、銃で自殺したアーネスト含め、マリエルの近親者だけでも7人が自殺している。本作は、映画『リップスティック』でマリエルとの姉妹共演を果たしながら、薬物で自殺した姉のマーゴをはじめ、家族の映像を交えながら進む。マーゴは鬱(うつ)、アルコールや薬物依存に悩まされ、リハビリ治療を受けたこともあったが、アーネストが亡くなった35年後の同日(正確にはアーネストは7月2日早朝、マーゴは7月1日)に自らの命を絶っている。
マリエルは、姉2人とは年が離れた末っ子ながら、ガンを患った母に代わって、幼い頃から家族の中で母親的な役割を務める。美しく奔放な姉たちが偉大な祖父のイメージを追い求めるのとは対照的に、アーネストの死後に生まれたマリエルはヘミングウェイ的なものを排除しようと努めてきた。同じ女優の道に進みながら、疎遠になってしまったマーゴを亡くしたマリエルには複雑な思いがあるようだ。
2人の姉が父親(アーネストの息子)から性的虐待を受けていたこともマリエルの心に重くのしかかっていた。本作は、マリエルが「ヘミングウェイ家の呪い」と呼ぶものから逃れようとする記録でもある。コップル監督は「これはマリエル・ヘミングウェイが本当にやりたかったことなの。最初のインタビューは3時間に及んで、彼女は全て話したわ。それで苦しみが癒やされたの。彼女は、彼女自身と家族への答えを探してもがいていた。これをやることで彼女は変わっていったのよ」と解説した。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)