北朝鮮、年間20本ほどの映画を製作?北朝鮮の映画主演女優とスタッフが記者会見
イタリアで開催された第15回ウディネ・ファーイースト映画祭で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)・イギリス・ベルギー合作映画『コムラード・キム・ゴーズ・フライング(英題) / Comrade Kime Goes Flying』が上映され、主演女優のハン・ジョンシムとプロデューサーのリョム・ミファらが舞台あいさつを行った。
同映画は地方の炭鉱婦であるヨンミが、母親の夢だった空中ブランコの花形スターを目指す青春物語。西欧の映画人が中心となって北朝鮮の俳優を起用し、北朝鮮で撮影が行われた話題作だ。同映画祭では北朝鮮映画を上映したことはあるが、ゲストを招くのは初めて。しかしなかなか彼女たち入国ビザが下りず、開幕直前に申請が通ったという。
公式上映では北朝鮮版『マイ・フェア・レディ』とも称される娯楽性と実際にサーカス団で活躍中のハンの華麗なアクロバティックシーンに観客からヤンヤの喝采が巻き起こった。観客の興奮は冷めやらずハンは記念写真攻めに遭い、「私の人生においてこんな瞬間が訪れるとは思わなかった」と思わぬ人気ぶりに顔を高揚させていた。
翌日はマスコミや観客を交えてのトークセッションが行われたが、司会者から政治的な質問はしないよう予め注意が促された。それでも記者たちは北朝鮮の実像を探ろうと質問が相次いだ。
まずは同作品の反応について問われると、リョムは「世界に通じるストーリー」を目指して製作したが、昨年9月に行われた平壌映画祭で「あまりにも西洋的」と幹部から批判を受けて上映中止の危機があったという。しかし、ハンのサーカス団仲間らが「子どもたちに夢を与える作品だと」と訴えて上映が実現。さらに劇場公開後は、サーカス団への入団志願者が急増したという。
また、本作をきっかけにハンには女優の道が拓け、すでにアクション映画にも出演したという。リョムによると、こうして北朝鮮では年間20本ほどの映画が製作され、中国やロシア映画を観ることができるというという国内映画事情も明かされた。
もっとも、北朝鮮映画を研究している映画評論家によると、昨年、北朝鮮で製作された映画は3本だという声もあり真相は分からない。そのハンとリョムの胸にはしっかり金日成・正日親子のバッジが付けられていたのも印象的だった。(取材・文:中山治美)