動物好きほど観るのを躊躇う…被災地の犬猫を追ったドキュメンタリーへの思い
東日本大震災で被災した犬や猫、原発事故で取り残された牛などの動物にスポットを当てたドキュメンタリー映画『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』の公開初日舞台あいさつが上映館のユーロスペース(渋谷)で行われ、宍戸大裕監督と飯田基晴プロデューサーが、観客に「この映画を、どうかいろいろなところで話題にしてください」と呼び掛けた。この日は宮城県石巻市で動物保護活動を展開するNPO法人アニマルクラブ代表の阿部智子さんも、会場に駆け付けた。
本作は、ペットが殺処分される現実を静かに訴え、注目された飯田基晴監督の『犬と猫と人間と』に続く第2弾で、飯田監督の下で学んだ宍戸大裕監督が初めてメガホンを取った。宮城県出身の宍戸監督は、震災1週間後に故郷に戻り、600日にわたる撮影を敢行。甚大な震災被害の中、飼い主に遺棄された犬猫や、原発事故で被曝したために殺処分される家畜を追い、人間の都合で生命を左右される動物の尊厳を守ろうと奮闘する人々の姿を伝えている。
宍戸監督は「公開初日を迎えたらどんな気持ちになるだろうと楽しみだったが、ここに立つと急に頭の中が真っ白になった」と笑いながらも「もう震災の話はいいのでは? もう終わったことだし、何もできないという声も聞きますが、この映画に描かれていることは、残念ながら今も続いている」と明かすと、「被災地で動物たちに起こったことは、次の災害のときにも起こりうること。このことは忘れてはいけないんだと思います」と静かに語った。
本作ではプロデューサーという立場で関わった飯田は、続けて「僕たちの映画は楽しくないし、動物が好きな人ほど見るのをためらわれる。(この映画の)104分の中には、たくさんのことが詰め込まれていて、一度には咀嚼しきれないくらい。ぜひ何度も観て、いろいろな人とこの作品の内容を話し合ってください」とアピールした。
震災時には急な判断を迫られて愛するペットを置き去りにし、そのことをいまだに悔やんでいる人たちもいるという。遺棄された犬猫や家畜の悲しみは、同時に人間の悲しみでもある。「震災での特別な出来事と考えるのではなく、福島や宮城で犠牲になったあの子たちの命を無駄にしたくない。今はそういう思いです」と宍戸監督は最後に強い決意を語っていた。(取材/岸田智)
映画『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』は本日よりユーロスペースほかにて全国順次公開中