海老蔵、父・團十郎は「死期を悟っていたのでは」と告白
歌舞伎俳優の市川海老蔵が10日、今年2月に亡くなった父・市川團十郎さんとの最後の共演作となった主演映画『利休にたずねよ』の完成報告会見を東京・新宿バルト9で行い、團十郎さんが本作の公開時には自分の命がないのではと悟っていたかのようなやりとりが撮影中にあったことを明かした。会見には、共演の中谷美紀と田中光敏監督も出席した。
海老蔵が茶人・千利休を演じた本作で、團十郎さんは利休の師匠・武野紹鴎(たけのじょうおう)役で出演。團十郎さんの撮影は2日間で行われ、出演シーンはわずか3、4シーンのみだったが、海老蔵は「資料を山のように読み込んで、ああだこうだとかなり研究して役づくりしていました。監督ともこのシーンはこうしなければいけないとか(意図を)話し合っていました」と強いこだわりを持って取り組んでいたことを振り返った。
しかし、完成した作品は團十郎さんが考えていた演出とは別のものになった。当時、田中監督が團十郎さんに意見を言いに行った際も、「(團十郎さんに)いっぱい抵抗されて(田中監督が)負けると思っていました」と海老蔵は回顧。
團十郎さんが意見を曲げるのは海老蔵にとって考えられないことだと言い、「父が二つ返事で『うん』と言ったと聞いたときにはドキッとして、この映画が公開するときには自分の命がないんじゃないかと認識していたのではなかろうかと思いました」と長年、病と闘ってきた團十郎さんが、撮影時にはすでに死期を悟っていたのではないかと感慨深く振り返っていた。
本作は「茶の湯天下一」とうたわれるも豊臣秀吉の怒りを買い、切腹を遂げた茶人の真相に迫った歴史ドラマ。市川が利休の10代から70代間際までの幅広い年代を演じ、若い頃の恋や、それを経て培った美への情熱と執着を壮大に描く。8月22日(現地時間)よりカナダで開催される第37回モントリオール世界映画祭のワールドコンペティション部門への出品も決まっている。(中村好伸)
映画『利休にたずねよ』は12月7日より全国東映系公開にて公開