宇崎竜童が振り返る映画界!映画のために作曲した歌だけでライブ!
ロック歌手で俳優の宇崎竜童が23日、映画のために作った楽曲だけで構成したトークショー付きライブを、大分県で開催中の第38回湯布院映画祭内で開催し、観客を熱狂の渦に巻き込んだ。
1973年に結成したダウン・タウン・ブギウギ・バンドでデビューした宇崎は、山口百恵など、多くの人気アーティストにも楽曲を提供。映画音楽も数多く手掛けた。この日のライブは、宇崎が映画に提供した楽曲をギターで弾き語り、合間に曲にまつわる思い出を語るというスタイルで進行。ライブは、人前で披露するのは初だという「煉獄のブルース」で幕を開けた。
映画音楽と宇崎の出会いはデビュー当時。泣かず飛ばずだったころ、にっかつロマンポルノのプロデューサーに声を掛けられたのがきっかけだったという。「当時ビアガーデンで1回30分のステージを5回やって、ギャラは4人で8,000円。それがロマンポルノの劇伴(サウンドトラック)だと、作曲、編曲、演奏料全部ひっくるめて10万円だった」と宇崎。
その後『仁義なき戦い』を撮り終えたばかりの深作欣二監督や菅原文太たちが「お前らのバンドと文ちゃんで、銀行強盗の映画を撮りたい」という話を持って来た。結局その話は流れてしまったというが、代わりに菅原から『トラック野郎 御意見無用』への出演を要請され、ワンシーンだけ、ガソリンスタンドの店員役を務めた。「初めて映画に出てセリフをしゃべるので、すごく興奮した。でも、もらったセリフは、桃次郎(菅原)のトラックの助手席に女優の中島ゆたかさんが乗っているシーンで、『兄貴、マブいスケを乗せてますね』だけだった」と振り返り、観客を笑わせる宇崎。
さらに宇崎は、ロマンポルノ作品『ラブホテル』に山口百恵の歌う「夜へ…」の使用オファーがあったとき、当時の山口の所属事務所からの電話に「(メガホンを取る)相米慎二は素晴らしい監督。そこで百恵さんの曲が流れても傷になりません」と答えたエピソードを述懐。そのほか、不良ロッカーと見られていた宇崎と鬼才・増村保造監督との心温まる思い出や、角川映画の裏話など、1970年代以降の日本映画史の裏側が垣間見える貴重な証言を次々に披露。映画ファンにとってたまらない夜となった。(取材・文:壬生智裕)
■この日のセットリスト
1.煉獄のブルース(『実録おんな鑑別所 性地獄』より)
2.一番星ブルース(『トラック野郎』シリーズより)
3.トラック・ドライヴィング・ブギ(『トラック野郎』シリーズより)
4.道行華(『曽根崎心中』より)
5.欲望の街(『白昼の死角』より)
6.ララバイ・オブ・ユー(『戦国自衛隊』より)
7.ハッシャバイ・シーガル(『TATTOO[刺青]あり』より)
8.夜へ…(『ラブホテル』より)
9.新宿心中(『われに撃つ用意あり READY TO SHOOT』より)
10.生きてるうちが花なんだぜ(『ニワトリはハダシだ』より)
第38回湯布院映画祭は8月25日まで由布市の湯布院公民館で開催中