ドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマンが語る!バークレー校を描いた約4時間の新作とは?
映画『州議会』『パリ・オペラ座のすべて』など数々のドキュメンタリーを手掛けてきたフレデリック・ワイズマンが、新作『アット・バークレー(原題) / At Berkeley』について、第51回ニューヨーク映画祭のプレス用試写で語った。
ワイズマン監督『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』場面写真
同作は、リーマンショック後に経営不振に陥ったアメリカ屈指の名門・カリフォルニア大学バークレー校を舞台に、その再建過程を生徒と教職員の観点から描いた約4時間のドキュメンタリー作品。
大学内の教職員や生徒を描いてはいるが、あえて誰にも焦点を合わせていないことについてワイズマンは、「もともと製作する前から、誰にも焦点を合わせずに撮影するつもりだった。僕が大学で撮影を始めたとき、すでにカリフォルニア大学バークレー校では財務上の問題が明らかで、それについて話し合っている状態だった。これまでの僕の作品では中心人物が居るものもあったが、今作では同校の財務上の問題を中心に描くことが重要だと思った」と明かした。
大学の周りのコミュニティーを描くことは考えなかったのかと尋ねられると、「実はバークレーの市長や弁護士の撮影も行っていた上、バークレー市内の警察の車に乗ってパトロールについていったこともあった。でも、このような大学の経営をテーマにした映画には、(一貫性を保つため)全てを含めるわけにはいかない。今述べた映像も興味深いが、キャンパス内の出来事だけにあえて焦点を絞った」と言う。
数多くの大学が全米にある中で、なぜカリフォルニア大学バークレー校を選択したのかという問いには、「同校は公立の大学の中では(教育の質が)素晴らしいと思っていて、彼らが撮影を許可してくれたのは本当に喜ばしいことだった。バークレー校はほとんどの学部や教職員との接触を許可してくれた」と答え、大学側の対応に感謝していた。
映画は4時間という長尺の中で、問題を抱える大学をさまざまな観点から描き、観客に問題提起していることがワイズマン独特のスタイルになっている。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)