チームメイトだった男が明かす自転車選手ランス・アームストロングとは?
映画『「闇」へ』のアレックス・ギブニー監督が、自転車選手ランス・アームストロングに迫った新作『ジ・アームストロング・ライ(原題) / The Armstrong Lie』について、ランスとチームメイトだったジョナサン・ヴォーターズが語った。
同作は、2005年に一度引退し、2009年に復帰したランス・アームストロングのドーピングの真実に迫った話題のドキュメンタリー作品。ジョナサン・ヴォーターズは、アームストロングが所属したUSポスタル・サービスでチームメイトだった 。
当時のチームのトレーニングは「実は僕らがこのチームに居た頃と現在では、かなりトレーニングのシステムが変わった。今は科学的な見地からトレーニングする傾向にあるが、当時は年に1、2度キャンプをチームで行うだけだった。そのキャンプもレースの2、3週間前に行い、ほとんどは個人トレーニングでコンディションを調整していた。だから、チームメイト同士でそれほどトレーニングはしていなかった」と振り返った。
映画内では、がんを克服したランスが、レースに負けることは死を意味すると語っているが、そんな彼の性格について「がんを患う前から、彼は今のような性格をしていた。彼は16、17歳から勝つことだけにこだわっていた。社会では勝利者はたたえられるが、彼は全米反ドーピング機関(USADA)に対して、挑発するような発言をしたことが問題だった。どんなトップに居る選手でも、ルールとフェアプレイを先決とすべきだった」と語った。
チームのコンサルタントの医師で、ランスのドーピングに関わるミケーレ・フェラーリ医師について「実は僕は彼に会ったことがないんだ。彼はオフィシャルのコーチではないうえ、チームにはミケーレのもとで働いていた医者が3人居た。だからチームメイトは、ランス以外ミケーレに全然会っていない。ただ、僕のキャリアの中で多くの選手がドラッグを使用したのを見てきたし、僕自身も使用していたが、そんな生活が嫌になり、僕は2003年に引退した」と衝撃の事実を語った。
最後に、ランスとの関係の変化について「僕らはそれほど近い友人だったわけではないが、ランスがドーピングを認めてから、むしろ選手だった頃よりもうまく付き合えている」と答えた。
映画は、 がんを克服して奇跡の復活を遂げた男が、ドーピングによって全てを失っていく姿が克明に描かれ、頂点で活躍するスポーツ選手の立場を考えさせられる作品になっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)