人気テレビドラマ脚本家、ディカプリオ主演作を語る!実在の人物を相手にする難しさ
レオナルド・ディカプリオの最新主演作の映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の脚本を手掛けたテレンス・ウィンターが、実在の人物を題材にする難しさを語った。テレンスは「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」といったテレビドラマで知られる脚本家。後者も『ウルフ・オブ・ウォールストリート』同様、実在の人物に着想を得た作品だ。
同作は、実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートの回想録が原作。邦訳では文庫本にして2冊分、計700ページ超というボリュームを誇るだけに、「そのまま映画化しようとしたら、18時間はかかるだろうと思った。僕にまず与えられたのは、長大な原作を整理して、一つのストーリーとして成立させることだった。だから、エピソードによっては時間や場所を変更しているし、3人の人物を1人のキャラクターにまとめたりしているよ」と裏側を明かす。
だが、実在の人物や出来事が題材になっている以上、扱いには慎重にならざるを得ない。おまけに原作には著者の創作ではないかと思えるほど破天荒なエピソードも盛り込まれており、そうしたものには手を焼いたという。だが、ある一つの縁が全てを一気に解決した。「僕の親友の奥さんの父親が、ジョーダンの知り合いだったんだ。あるときジョーダンが何も知らずに『僕の回想録が映画になるらしいんだ。今はちょうど脚本化の作業中でね』という話をしていたら、その場にいたその父親が『へえ。実は俺にも一人、脚本家の知り合いがいるんだ』となって、そう、その脚本家が僕だったというわけさ」。
その偶然に、テレンスは「人生にこんなことがあるのか!」と天啓にうたれた。「原作ではボートで沈没しかかったジョーダンが飛行機に救われるシーンがあるけれど、そうした“うそみたいな本当の偶然”は人生に起こり得るんだ。そのことを知ってしまえば、後は脚本を書くのは楽しいばかりだったよ。何せ、原作にはそんなエピソードがごまんとあるわけだからね」と笑う。
主人公のモデルになったジョーダンはアメリカンドリームの体現者であると同時に、犯罪者として罰を受けた人物でもある。そうした毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい人物だからこそ「僕はこの映画で、ジョーダンのことをジャッジしようとは思わなかった。ただ事実に則した物語にして、あとは観客の判断に任せようと思ったんだ」とテレンス。「確かにジョーダンは悪いやつではあるんだろう。でも彼は、金持ちになりたいという普通の、ただ少しばかり大きすぎる野心を持った子どもでもあったんだ」と本作に込めたメッセージを語った。(編集部・福田麗)
映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は年1月31日より新宿ピカデリーほかにて全国公開