命懸けで学校に通う子どもたちとは?仏アカデミー賞受賞作の監督&出演者が来日
フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞(第39回)で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した感動作『世界の果ての通学路』のトークイベントが22日、シネマート六本木で行われ、パスカル・プリッソン監督と本作に登場するケニアの兄妹ジャクソンくん、サロメちゃんが登壇し、命を懸けてでも学校へ行く大切さや意義を熱く語った。またこの日はほかに、小児科医で子どもの発達研究を行っているお茶の水女子大学大学院の榊原洋一教授も出席した。
本作は、ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インドと異なる四つの地域の“通学路”に密着し、数十キロに及ぶ危険な道のりを駆け抜ける子どもたちのひたむきな姿を捉えた感動の長編ドキュメンタリー。『MASAI マサイ』のプリッソン監督がメガホンを取り、どんな過酷な環境に置かれても学ぼうとする子どもたちの心情に迫る。
時に野生動物に襲われる危険も伴う片道15キロ2時間のサバンナが通学路だったジャクソンくん。将来はパイロットになりたいという彼は、「学校はとても大切なところだと両親から教わった。学校は僕たちにとって人生を切り開くための源。だから、リスクがあっても将来のために行かなければならない」と堂々とした口調で持論を展開。さらに、日本は学校嫌いな子どもたちが多いと聞いたジャクソンくんは、「世界には学びたくても学べない子どもたちがたくさんいる。学校を否定したり、軽んじたりしないでほしい」と訴えた。
一方、そんな子どもたちを撮り続けてきたプリッソン監督は、「彼らは過酷な環境の中でも学校に行く意義や将来の展望をきちんと持っている。特にジャクソンは年齢以上に成熟していて、競争社会を理解している。サロメは今日あまりしゃべっていないけれど、ケニアの女の子が兄の後を追い掛けて学校に通うことはとても勇気が要ること」と兄妹を絶賛した。
さらにプリッソン監督は、「わたしの母国フランスでは、この映画が社会現象にもなっていて、学校の教材として上映しているところもあるようだ。われわれは何にでも簡単にアクセスできる恵まれた環境にいることに気付き、欠けているものは何か、学校に行くモチベーションを高めるためにはどうしたらいいかをもっと学ぶべきだ。この映画がそのきっかけになってくれれば」と強調していた。(取材・文:坂田正樹)
映画『世界の果ての通学路』は4月12日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開