『長江哀歌(エレジー)』ジャ・ジャンクー監督、北野武の大ファン!
第66回カンヌ国際映画祭脚本賞ほか数々の世界的映画賞を受賞した話題作『罪の手ざわり』のジャ・ジャンクー監督と主演女優のチャオ・タオが2日、渋谷・Bunkamuraで来日記者会見を行った。約5年ぶりの来日を果たしたジャンクー監督は、「初期の作品から製作に協力してくれたオフィス北野さんにはとても感謝している。もちろん北野武監督の大ファンで、彼が描く暴力の背後に漂う孤独感が好きだ」と国境を越えた映画人同志の交流を明かした。
本作は、中国の名匠ジャンクー監督がベネチア国際映画祭金獅子賞(2006年)を受賞した『長江哀歌(エレジー)』以来、長編劇映画としては実に7年ぶりの作品となる社会派ドラマ。ヒロインには同作のほか『プラットホーム』、セミ・ドキュメンタリー『四川のうた』とジャンクー監督のほとんどの作品に出演しているチャオを迎え、中国で実際に起きた4つの悲劇的事件を通して、ひたむきに生きる人々に降り掛かるこの世の不条理を厳しい視点で描く。
スティーヴン・スピルバーグほか世界の映画人から絶賛を浴び、カンヌで脚本賞を受賞したことについてジャンクー監督は、「この賞を受賞したおかげで40か国以上の公開が決まり、たくさんの人々に観ていただけることが何よりうれしい」と喜びを素直に表現した。一方、女優という立場では初来日となるチャオは、「俳優の一人としてカンヌ映画祭での受賞を心から喜んでいます。ジャンクー監督とはずっと一緒に映画を作ってきましたが、さまざまな国でいろいろな人々と映画を通じた交流をできることがうれしい。この映画が日本で公開することを誇りに思います」と穏やかな表情で語った。
また、今回の作品についてジャンクー監督は、「関連性のなかったいくつものニュースがどこかでつながっていく今のネット社会を象徴するために、4つの悲劇的な暴力事件を描くことにした。バラバラな地域で起きた出来事が、観る側の心の中で共通の思いとしてつながっていく映画にしたかった」と語り、さらに、「暴力に立ち向かう人々の気持ちも尊重するが、立ち向かう手段は暴力でなくてもいい。『それが映画だ』と僕は思っている」と作品に込めたメッセージを強調した。(取材・文:坂田正樹)
映画『罪の手ざわり』は5月31日よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開