ハリウッド版三谷幸喜か?有名俳優がこぞって出演したがる才人監督!
最新作『グランド・ブダペスト・ホテル』をはじめ、名優たちがこぞって作品への出演を熱望する才人ウェス・アンダーソン監督と、同じく脚本家兼監督で多くの俳優から愛される存在である日本の三谷幸喜との共通点を検証してみた。
個性的な名優たちが豪華競演!映画『グランド・ブダペスト・ホテル』フォトギャラリー
全米で公開劇場1館あたりの興行収入が歴代最高記録を更新するなど、世界各国で大ヒット中で、アンダーソンのキャリア史上最大のヒット作となっている『グランド・ブダペスト・ホテル』。ちなみに、興行収入60億8,000万円(日本映画製作者連盟調べ)を記録した『THE有頂天ホテル』も三谷監督最大のヒット作で、主人公は役所広司が演じた「申し分のない副支配人」。どこかレイフ・ファインズの演じた『グランド・ブダペスト・ホテル』の主人公の「伝説のコンシェルジュ」とも重なる。『THE有頂天ホテル』は役所の他、佐藤浩市、戸田恵子、香取慎吾など三谷お気に入りの常連俳優が出演。一方、アンダーソン監督も2作目以降の長編全作にビル・マーレイを出演させるなど、好きな俳優をとことん使う。他にオーウェン・ウィルソン、ジェイソン・シュワルツマンらがおなじみの役者で、今回は全員コンシェルジュ役だ。
有名だからといって、大役とは限らない。『グランド・ブダペスト・ホテル』では名優ハーヴェイ・カイテルがスキンヘッドで囚人の一人を演じ、『THE有頂天ホテル』ではオダギリジョーがハゲヅラで筆の達人を演じた。どちらも大変身。他にもわずかな出番でもとんでもないインパクトを見せる有名俳優たちが多数出演している。
逆に無名の新人を大役に抜てきすることも。『グランド・ブダペスト・ホテル』で大活躍するベルボーイはオーディションで選ばれた新人トニー・レヴォロリ。ちなみにアンダーソン監督のデビュー作以降、抜群の存在感を放っていたインド系俳優のクマール・パラーナは監督行きつけのコーヒーショップ経営者だった。三谷にも同じことがいえ、『THE有頂天ホテル』にも出演し、いまや名脇役となった石井正則は元々お笑い芸人。テレビドラマ「古畑任三郎」で三谷がレギュラー刑事役に抜てきし、その才能を開花させた。
誰にもまねできないユニークな脚本を書き、監督としてその世界を完璧に作り上げ、その才能に名優たちが集う。オリジナル作品がなかなか作られなくなった現在の映画業界において、多くのファンがその新作を待ち望んでいるのが日本とハリウッドの二人の才人、ウェス・アンダーソンと三谷幸喜なのである。(高山亜紀)
映画『グランド・ブダペスト・ホテル』は6月6日より全国公開