ベネット・ミラー監督、カンヌ会見で涙 マーク・ラファロもらい泣き
第67回カンヌ国際映画祭
第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された映画『フォックスキャッチャー(原題) / Foxcatcher』が高い評価を集めているベネット・ミラー監督が、会見で長年の盟友だった故フィリップ・シーモア・ホフマンさんへの思いを語った。
チャニング・テイタムが二人の背中をさする場面も…『フォックスキャッチャー(原題)』カンヌ会見フォトギャラリー
本作は、妄想型統合失調症を患っていたデュポン財閥の御曹司が、五輪金メダリストのレスラーを射殺した実在の事件をベースにした物語。真面目で優秀な兄をマーク・ラファロが、デュポンの独裁に依存していく弟をチャニング・テイタムが、殺人を犯してしまうことになるデュポンをスティーヴ・カレルが演じている。
19日(現地時間)に行われた公式上映でもブラボーの声が飛んだ本作で、最も異彩を放っていたのが映画『40歳の童貞男』などでコメディー俳優として有名なカレルの怪演だ。金と権力で人をねじ伏せる高圧的な男を演じたカレルは気味悪さに満ちていて、コメディー俳優としての一面を完全に消し去った演技だった。
映画『カポーティ』では、フィリップ・シーモア・ホフマンさんを、声もしぐさも全て作家トルーマン・カポーティそのものに変身させてアカデミー主演男優賞受賞にまで導いたミラー監督は、同会見の「この映画のカレルは、個人を完全に消し去って役に成り切ったカポーティのフィリップをほうふつさせる。どのように演出したのか?」という質問に声を詰まらせた。
ミラー監督にとってフィリップさんは初長編作品のプロデューサーであり、主役を演じたまさに恩師。記者からの質問で亡き盟友フィリップさんのことが頭をよぎったのか、監督は声を震わせながら「フィル(フィリップさん)はもちろんのこと、自分を信じてくれている役者たちと仕事をすることに対して僕は……、自分の残された人生でずっと感謝し続けることでしょう」と語った。
その言葉に、共に壇上に座っていたマークも涙をぬぐい、二人の間に座っていたチャニングが両手で背中をさする場面も。ミラー監督から伝わる熱い思いに会見場は拍手に包まれ、もらい泣きする記者の姿もあった。(編集部・森田真帆)
第67回カンヌ国際映画祭は5月25日(現地時間)までフランス・カンヌで開催