人間はいかに野獣に近いか…異色ドキュメンタリー『リヴァイアサン』の監督が来日
マサチューセッツ州のとある港から海に出た、巨大底びき網漁船の過酷な漁の模様を人間以外の視点で映し出したドキュメンタリー映画『リヴァイアサン』の日本公開を記念したイベントが22日、都内で行われ、本作で共同監督を務めたルーシァン・キャステーヌ=テイラーとヴェレナ・パラヴェル、そして本作に衝撃を受けたという映像作家の想田和弘が出席した。
共に映像作家でありながら、ハーバード大学「感覚民族誌学研究所」の人類学者という肩書を持つテイラーとパラヴェル。本イベントのため21日に来日し、過去のドキュメンタリー作品『Sweetgrass』の上映をはじめ、同ラボ製作の作品群を断片的に上映しながら熱心にトークを展開した。
二人はこれまで誰も試みたことのないやり方で人間、海、機械装置、海洋生物といった現代商業漁業に関わる全てを鮮烈に生々しく活写している。テイラーは「あまりにも美しい映像というのは非常に危険。わたしが伝えたかった人間と動物の間の暴力的な関係性はポストカードのような美しい映像では描き切れない」と語り、パラヴェルも「(本作では)映画的な視線を作り上げなかったことに満足している」と同調する。
人類学者であり映像作家であるという立ち位置についても「人類学者は文字を通して人間体系を伝えるが、言葉だけでは伝えられないものもたくさんあり、わたしたちはイメージと音響を使って伝達していくという道を選んだ」と説明したテイラー。「アカデミックな散文に対して、詩(=映画)でなければ伝えられないものがある。わたしたちの作品に共通するのは、人間がいかに野獣に近いかという考え方。それを今回『リヴァイアサン』で一番際立った形で表現することができた」と続け、本作の出来に自信を見せていた。(取材・文:名鹿祥史)
映画『リヴァイアサン』は8月23日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開