パレスチナとイスラエルを自由に行き来する映画を撮りたい…ドキュメンタリー監督が来日
中東の社会情勢と政治に対して挑発的で力強いメッセージを発信し続けるイスラエル生まれのドキュメンタリー作家アヴィ・モグラビ監督が22日、最新作『庭園に入れば』の東京上映のプレイベントに出席し、イスラエル建国を基点にした中東の過去・現在・未来、そして自身が手掛けるドキュメンタリー映画の意義について熱いトークを繰り広げた。
本作は、山形国際ドキュメンタリー映画祭1999で優秀賞に輝いた『ハッピー・バースデー、Mr.モグラビ』などで知られるモグラビ監督が、中東情勢に対して新たなビジョンを提起した渾身の1作。モグラビ監督は、長年の友人であるパレスチナ人アリ・アル=アズハリを連れ立って出自を振り返り、政治情勢に翻弄(ほんろう)された故郷の在りようをたどる。
この作品を作ったきっかけについてモグラビ監督は、「父のいとこにあたるマルセルがモデルだ」と明かす。「父と同じくベイルート育ちのマルセルは、イスラエルが建国され、レバノンとイスラエルが敵対国家になったにもかかわらず、ベイルートにとどまった。ところが、どういうわけか、分断されたベイルートとイスラエルを自由に行き来しているんだ。新しいルールに決して屈しないその姿に感動した」と述懐する。
パレスチナとイスラエルを自由に行き来する映画を撮りたい、そんな思いから、アラビア語の堪能なパレスチナ人の友人アリを誘ったといい、「彼は役者のような表現者。お互いに、わたしの父を演じてみたり、マルセルを演じてみたり、時にはアリの歴史が混じったり、全てがその瞬間に起こっている即興で、どこへ行くかわからない映画の準備段階をそのまま映画にしてしまった」と笑みをこぼした。
「この映画はある意味、ファンタジーともいえる。わたしはこの映画で夢を見たいと思った」と目を輝かせたモグラビ監督。「中東情勢はいまも変わらず終りが見えない。そんな中、わたしたちは、このドキュメンタリー作品を通して、現実に抗うような新しいビジョンを提起したかったんだ」と力強くアピールした。(取材:坂田正樹)
映画『庭園に入れば』は11月中旬より新宿K’s cinemaにて開催される山形国際ドキュメンタリー映画祭「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー」山形 in 東京2014にて上映