『ラピュタ』誕生はわずか5分だった
23日、ジブリアニメ『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』のブルーレイ&DVD発売を記念したトークイベントがスペースFS汐留で行われ、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーとAKB48グループの秋元康総合プロデューサーが初対談を行った。
対談ではおよそ90分にわたり、アニメーションをはじめとするエンターテインメント業界の未来や海外進出の可能性、お互いのプロデューサー業など、テーマは多岐にわたって展開。2大巨匠の宮崎駿監督と高畑勲監督を相手に忍耐強く接して数々の名作を世に送り出した鈴木氏の手腕に、秋元氏が褒め言葉として「どMなんですね」と表現して笑いを誘う一幕もあった。そんな中、鈴木氏は宮崎監督作品『天空の城ラピュタ』誕生秘話にも触れて、当時宮崎監督がわずか5分で企画を提案したエピソードも紹介した。
『風の谷のナウシカ』の成功後、宮崎監督は「悪いけど二度と映画を作らない。仲間に言いたくない事を言わないといけないので、作品ができた一方でいろいろな友達を失って辛い。アニメーターに戻りたい」と決めていたそうだが、その一方で、『風の谷のナウシカ』の成功で得たおよそ6,000万円という大金の使い道に悩んでいたという。
「家を建て替えたいし車も買いたいけど、そんな事をやったらみんなから後ろ指さされるんじぁないかな」と宮崎監督から相談された鈴木氏は、高畑監督のドキュメンタリー映画に出資することを提案。これに宮崎監督も快諾し「これなら俺もいい事に使ったと評判がよくなる」と喜んでいたそうだ。
しかし、凝り性の高畑監督だけに映画が半分も完成しないうちに予算を使い切ってしまう事態に。当時の様子を鈴木氏は「宮崎は人間的に非常にできた人で、『どうしよう、家を抵当に入れるのは嫌だし』と悩んでいた」と切羽詰まっていた様子を述懐し、「僕が『もう一本やりますか?』と言ったら宮崎駿は実に即断即決の人で即『わかった』と。そして、『天空の城ラピュタ』の企画を5分で説明したんです」と説明。あまりの手際の良さに「『考えていたんですか?』って聞いたら『小学校の頃考えていた』と言っていました」とやり取りを振り返り、「高畑さんが予算以内に作品を作っていれば、『天空の城ラピュタ』は誕生しなかった」と2大巨匠の関わったエピソードを語った。
流れの中で起きたこの誕生秘話に、秋元氏もAKB48の誕生については当初行き当たりばったりだったことを振り返り、「先は考えていないです。ただ面白そうという流れで。(他では)どうしてもバットを短く持って当てていかないといけないけど、そういうプレッシャーがAKB48のときにはなかったので、一番先っぽを持ってぶんぶん振り回していました」と述懐しつつ、「今敏夫さんの話を聞いて、人生何とかなるんだと力強くアドバイスしていただいた気がします」と共感していた。(中村好伸)
『風立ちぬ』はブルーレイ&DVD発売中
『かぐや姫の物語』ブルーレイ&DVDは12月3日発売