ポール・トーマス・アンダーソン監督、ホアキン・フェニックス再タッグの話題作とは?
ニューヨーク映画祭(N.Y.F.F 52)で、ポール・トーマス・アンダーソン監督が新作『インヒアレント・ヴァイス(原題) / Inherent Vice』について語った。
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本作は、70年代のカリフォルニアを舞台に、マリファナ常用者の私立探偵ドック(ホアキン・フェニックス)は、元恋人シャスタから依頼を受けるが、自分の記憶さえ定かでないドックは、徐々に秘密組織“黄金の牙”の活動を知り、都市開発に関わる陰謀に巻き込まれていくというストーリー。トマス・ピンチョンの原作「LAヴァイス」を基に映画化された。共演はリース・ウィザースプーン、オーウェン・ウィルソンなど。
ナレーションの使用について「ナレーションをした女優ジョアナ・ニューソムは、ドックの親友を演じていて、彼女の話し方やルックスが僕は好きだ。映画内では彼女が演じるソルティレージュ(通称レージュ)は、ドックよりむしろ多くのことを知っている設定だ。長い間、ナレーションの使用は映画を駄目にするから、ナレーションに頼らず、キャラクターを通して説明すべきだと言われてきた。だから、ナレーションの使用に初めはちゅうちょしたが、レージュのナレーションを通して多くのことが伝えられ、ストーリー構成にも役に立ち、映画内で起きていることから何か差し引くこともなかった」と述べた。映画化が困難と思われていた原作をナレーションによってわかりやすくしている。
映画内で、キャラクターの会話を分割スクリーンの映像で同時に鑑賞できるシーンが多いのは「例えばホアキンとオーウェンの会話で、彼らのように素晴らしい俳優と優れた原作の台詞がある場合、カットで会話をつなげるよりも、二人同時に分割スクリーン映像で映した方がうまくいく。その方がキャラクターの考えや行動が説明しやすいんだ。それにホアキンとオーウェンのような優れた俳優は、そのような撮影にも慣れている」と答えた。
35ミリフィルムで撮影していることについて「35ミリでの撮影は、僕のキャリアの初期からずっとそうだった。それが唯一、僕が知っているやり方だ。もちろん、素晴らしいプリント映像を見せられると同時に、(デジタルと違いミスのできない)緊張感も付随するけどね。僕はもう少しフィルム撮影を続けたいと思っている。デジタルとフィルムは共存すべきで、フィルムは消滅すべきではない」と力説した。
映画は、監督の演出に感嘆させられる作品に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)