愛妻亡くしたダンカン、「生きている実感ない」と吐露
お笑い芸人のダンカンが17日、都内にて行われた映画『うまれる ずっと、いっしょ。』のシンポジウムに出席し、6月に最愛の妻を乳がんで亡くした今の自分について「生きている実感がない。抜け殻のよう」と胸の内を明かした。
愛する人との死別を経験した人間が陥る「グリーフ(悲嘆)」からの立ち直りを描いた本作にちなみ、メガホンを取った豪田トモ監督らとシンポジウムに参加したダンカン。「あまりにも突然の死で、自分が抜け殻になってしまったような気持ちで、5か月たった今も全く変わらない」と現在の心境を吐露すると、「これまでのテレビや映画、お笑いの仕事はママリン(亡き妻の愛称)に対してやってきたこと。例えば今、ドラマに出て、100万人が褒めてくれることよりも、ママリンからの『あんたダメよ』というたった一言がうれしい」とよく言われていたという叱咤激励の言葉を懐かしんだ。
そんなダンカンの現在の支えになっているのは15歳の息子で、部活動帰りにアツアツでおいしい夕食を食べさせるために帰宅前に駅から電話をかけさせ、タイミングを見計らって調理をしているそう。「いつもママリンもそういうふうな状態で僕を待っていてくれたのに、『(ビート)たけしさんに誘われたから酒飲みに行ってくるわ』と電話一本でその気持ちをないがしろにしていた」と後悔をにじませつつ、今は「人のために何かを一生懸命、無償でやることは幸せだなと思う」と気持ちの変化を明かした。
また、「亡くなったときに『頑張って』と言われたことにすごく腹が立ちました」と憤りを見せるダンカン。「頑張る源の種があって、それを育てようとするから頑張る。その種はママリンだった。それがないから頑張りようがない。それより、静かにそばでうんうんとうなずいてくれる人や、軽く手だけを握ってくれる人の方がいい」と当時に触れながらグリーフケアにつながる自身の思いを語っていた。
本作は、40万人を動員したドキュメンタリー映画『うまれる』(2010)に続く第二章。愛妻を亡くした夫、血縁のない息子との関係に悩む父親、重度の障害のある息子を育む夫婦という3家族を通して、自分たちが生まれてきた意味や家族の絆、命の大切さなどを描く。女優・樹木希林がナレーションを務めている。(取材・文:鶴見菜美子)
映画『うまれる ずっと、いっしょ。』は11月22日よりシネスイッチ銀座ほか全国公開