25歳でカンヌ国際映画祭で審査員賞を獲得した気鋭グザヴィエ・ドラン監督の新作とは?
20歳の時に映画『マイ・マザー』で監督デビューを果たした気鋭グザヴィエ・ドランが、新作『マミー(原題) / Mommy』について語った。
同作は、夫を亡くしたシングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)は、ADHD(注意欠如多動性障害)を患う暴力的な少年スティーブ(アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)に手を焼いていたある日、隣に引っ越してきた教師の経験を持つ謎の女性カイラ(スザンヌ・クレマン)の助けを借り、無秩序だった生活に変化が起きていくというドラマ。本作は昨年のカンヌ国際映画際の審査員賞を受賞し、今年のアカデミー賞外国語映画賞部門のカナダ代表作でもある。
スティーブ役を演じたアントワーヌのキャスティングついて「決してADHDを患ったり、衝動的な行動をしたり、暴力的な人物を見つけようとしたわけではない。僕とアントワーヌはフランスのバンド・アンドシーヌの楽曲『College Boy』のMVを撮影したけど、そのMVは本作とは全く別だ。彼が逆に暴力を振るわれていて、同じ少年だとは思えない演技を披露している。もっとも僕はそんな彼の演技よりも、むしろセットでの彼のプロとしての丁寧な対応と耳を傾ける態度から選んだ」と語った通り、アントワーヌの表現力も魅力の一つだ。
障害を抱える子供の養育を放棄できる法律が存在するという架空の設定にしたのは「製作前に医者と、スティーブというキャラクターに関して話をして、スティーブの感情の起伏が理にかなったものであることがわかった。だが、ロケーションスカウトで実際に矯正施設を訪れて管理者と話した際に、スティーブが問題を起こして退学させられ家に戻るシーンは、道理に合わないと指摘された。なぜなら通常の矯正施設ならば、スティーブへの対応を法的により強化させるからだ。そのため、僕が伝えたいと思う母親の愛情と友情を優先し、架空のカナダの設定にした」と明かした。
隣人カイラの過去が謎であるのは「カイラの興味深い点が、映画内ではある程度明かされている。例えばスティーブがカイラのネックレスを奪った時、温厚だった彼女が突如スティーブの首をつかむ暴力的な行為をし、彼女には心底からわきあふれる怒りやエネルギーがあることを観客は知らされる。そして、そのネックレスが(過去の)死に関連していることを観客は理解することになる」と説明した。
映画は、ドラン監督の演出力に脱帽させられる作品となっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)