東日本大震災から4年…震災映画を世に出す苦悩 -第10回大阪アジアン映画祭
東日本大震災から4年を迎えた11日、開催中の第10回大阪アジアン映画祭で特集企画「メモリアル3.11」が行われ、震災の影響で公開が延期されていた中国映画『唐山大地震』と、同じく公開が中断されたクリント・イーストウッド監督『ヒア アフター』の上映や、「震災と映画」と題したトークセッションが開催された。トークセッションの冒頭では、観客全員で犠牲者への1分間の黙とうがささげられた。
同映画祭では例年この特集企画が設けられており、今年で3回目。さらに阪神・淡路大震災から20年とあって、トークセッションでは記念作品『劇場版 神戸在住』の白羽弥仁監督、『唐山大震災』を配給する松竹の常務取締役・映像本部長の大角正氏が出席し、震災映画を世に出す苦悩や作品に込めた思いなどが語られた。
『唐山大地震』は2011年3月26日に日本公開予定だったが、東日本大震災で延期に。約3億円の宣伝広告費をかけた松竹の勝負作だった。大角氏は「CMはすべてACに代わり、宣伝活動ができないこともあって延期を決めた」という。しかし1976年の中国・唐山大地震の被災者が「自分たちのメモリアルな映画を作ってほしい」とフォン・シャオガン監督に掛けあって製作された力作であり、地震大国である日本の観客にいつか見せたいという「執念があった」と話す。
そこで松竹では震災以降、半年に1度、約3,000人に「震災映画を観たいと思うか?」というアンケート調査を行ってきたという。大角氏は「最初は『観たい』と『被災者に気をつかうべき』の声が半々。そのうち日中関係が悪化し、『中国の映画だからイヤだ』という意見も出てきた。しかし映画は娯楽であり、国境は関係ない。震災のニュースも減ってきたので、ぼちぼちやっていこうと決めた」と今年の公開を決めた経緯を明かした。
ただし、震災や事故などを題材にした映画が公開されるとなると「不謹慎」とか「人の不幸で商売している」などの批判が起きがちだ。攻撃を受けまいと自主規制する動きも出てくる。そうした風潮に対して、司会を務めた映画評論家の上野昂志氏は最後に「最近は映画を観ていないうちから批判をし、マスコミも不謹慎だと言いがちだ。映画は映画であって、観る、観ないは観客一人一人が判断すべきだと思います」と観客に投げかけた。(取材・文:中山治美)
映画『唐山大地震』は3月14日より公開
テレビドラマ「神戸在住」はサンテレビで3月15日午後12時より再放送。福島中央テレビでは3月22日13時55分より放送。
第10回大阪アジアン映画祭は3月15日まで大阪・梅田ブルグ7などで開催中