同性愛、少女虐待、差別と偏見…国際派女優ペ・ドゥナが出演を即決した衝撃作の監督が来日!
映画『クラウド アトラス』『ジュピター』など国際的に活躍する韓国女優ぺ・ドゥナが主演を務めた衝撃作『私の少女』のトークイベントが26日、渋谷区の映画美学校で行われ、脚本も手掛けた俊英チョン・ジュリ監督が映画化の経緯や撮影の裏話を語った。
本作は、田舎に左遷された同性愛者の元エリート女性警察官と虐待を受ける孤独な少女の心の交流を、さまざまな社会問題を織り交ぜながら描く衝撃のドラマ。『オアシス』などで知られる名匠イ・チャンドンが、チョン監督の才能を見いだしてプロデュースを志願し、映画化が実現した。天才子役キム・セロンの鬼気迫る演技も見どころの一つ。
第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門や東京フィルメックスコンペティション部門で上映され、高い評価を受けた本作。その新人離れした脚本は、ハリウッドを中心に活躍するペ・ドゥナを2年ぶりに母国へと呼び寄せた。「物語を書いている段階で、主役はドゥナさんとセロンさんをイメージしていた」というチョン監督は、プロデューサーを介して2人に脚本を送ったという。「ドゥナさんは脚本を受け取って、わずか3時間後に出演を快諾してくれた。主人公の孤独とハリウッドで寂しい思いをしている自身の気持ちがリンクしたのだと思う」と述懐する。
一方のセロンは、複雑な役柄のため一度は辞退。その後、500人の子役をオーディションしたが決まらず、再度ラブコールを送ってなんとか承諾させた。チョン監督が「彼女なりに小さな心を悩ませての決断」と言うように、撮影は過酷なシーンの連続。虐待に耐えかねたセロンがある策略を持って義父を挑発するシーンに触れ、「精神的にも厳しい場面だったので、カウンセラーを待機させての撮影でした。ところが、セロンさんは役にのめり込むのも早いが、抜けるのも早い」とそのスキルの高さを称賛した。
また、本作にはさまざまな社会問題がちりばめられているが、これに対してチョン監督は、「同性愛や少女虐待、不法就労など、どれを取っても1本の映画ができるくらいですね。これは、社会問題を声高に告発するためではなく、孤独な女性と少女を引き合わせるために必要だった背景。でも、全てに共通しているのは、人間の中にある『寂しさ』だと思う」と説明した。(取材:坂田正樹)
映画『私の少女』は5月1日よりユーロスペース、新宿武蔵野館(レイトショー)ほか全国順次公開