林家たい平、“笑点の人”から“映画の人”へ
「笑点」の出演でも知られる落語家の林家たい平が27日、都内で行われた主演映画『もういちど』のブルーレイ&DVD発売記念イベントに板屋宏幸監督と共に出席し、本作が完成に至るまでの苦労と、公開後の温かい反応に触れた思い出を語った。
「寄席で落語を見る機会は限られるから、映画館を寄席に見立てて、映画で落語を見てもらおうと始めた“映画館落語”ですが、これが3本目」と切り出したたい平は、「板屋監督は、周りに全くいないタイプだから、お会いしたとき『黒船来航だ、むちゃくちゃさせる』って思って、僕はバリア張っていたでしょ?」と初対面の思い出を語ると、「でもすぐに、すごく熱い人だってわかった。深川江戸資料館で撮影しようという僕の一言で、監督には苦労をかけました」と監督をねぎらった。
一方、撮影を振り返った板屋監督は「江戸の町並みを再現した館内をお借りしたんですが、建物だから空も風も土もない。火を使うことも、屋根をぶち抜くことも当然できないので、狭い空間にカメラを入れ、地面や背景は、全カットの6割はCGで描いていった。SF超大作並みのスペクタクル落語映画です」と笑わせたが、「学生時代から映画監督になりたくて、この作品で音楽業界から映画の世界にレーンチェンジできた。撮影では失敗ばかりが気になって、俺には映画はまだ早かったんじゃないかって思うこともありました。でも完成後は、たくさんの人に喜んでもらえて。34年かかったけど、遠回りじゃなかったと思います」と少し目を潤ませながら熱い思いを吐露。
これにたい平も「実は、本作を会津若松市の教育長の方が大変評価してくれて、会津若松・全11校の中学で上映会を企画してもらい、板屋監督は11校全部に行ってきたんです。僕も会津若松に行くと『笑点の人』じゃなく『映画の人』って呼ばれてうれしかった。映画館がない地方だと、たくさんの友達と一緒に笑ったり泣いたりしながら映画を観る体験というのは、初めてだそうなんです。この映画は、観た人たちの力でどんどん大きくなっていった。初めての経験でした」と力を込めていた。
本作は、過去のつらい出来事から落語家を諦め、深川の長屋に流れ着いたたい平が、そこで出会った少年や長屋の人々の人情に触れ、再起する様を笑いと涙で描く。(取材/岸田智)
映画『もういちど』ブルーレイ&DVDは発売中