AV撮影の裏側を描いた新作で、規制を逆手に取った演出とは?伊映画祭で驚きの声
アダルトビデオ撮影の舞台裏を描いた映画『メイクルーム』が、イタリアで開催中の第17回ウディネ・ファーイースト映画祭で上映され、現地時間27日、森川圭監督と女優の栗林里莉がトークイベントを開催した。自身が参加している歌手グループSEXY-Jの衣装に身を包んだ栗林は、イベント後、現地マスコミからも2ショット写真をおねだりされるほど大人気だった。
同作品はピンク映画出身でAVを数多く手掛けている森川監督が、2010年に舞台上演したワンシチュエーション・コメディーを自ら映画化。本年度ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門のグランプリ受賞作だ。劇中では、日本の風俗産業が赤裸々に描かれているとあって「単体と企画物と言っていたが、どんなジャンルがあるのか?」「女優に対して男優は少ないと聞いたが本当か?」など質問が続出した。
中でも注目を浴びたのは西洋と日本の性文化の違い。今回、同映画祭で上映された映画『さよなら歌舞伎町』にも入れられていたが、性描写でのボカシやモザイクは日本映画ならではの特徴として世界に知れわたっている。しかし森川監督が「これは言っていいのかな。AVはモザイクをかけるのを前提に作られているので、実際にはしていなくとも、そう見せることはできるワケです」と規制を逆手に取った演出もあることを暴露。これには会場から驚きの声が上がっていたが、日本文化に精通しているはずの日伊の通訳までもが「あのボカシの裏では、本当に見えるような技術と女優さんたちの演技力が発揮されていたわけですね。新たな発見でした!」と興奮しながら話していた。
また日本映画史においてピンク映画が多彩な監督を輩出したことは海外でも知られており、同映画祭でも滝田洋二郎監督や廣木隆一監督らを度々紹介。2011年にはピンク映画製作会社で知られる国映を特集している。森川監督にも「海外を含めメインストリームへの興味は?」という問いが出たが、森川監督は「海外から依頼があれば挑戦したいが、この仕事に誇りを持っているので離れることはないと思います」と胸を張った。
同作の海外セールスを担当している英国「サードウィンドウフィルムズ」の代表アダム・トレルによると、中国では性的な内容のために断られたそうだが、台湾、香港、韓国、イギリスでの配給が決定しているという。そして森川監督は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で獲得した賞金(次回作の製作費として200万円)を活用し、『メイクルーム』の4か月後を描いた続編の撮影を今年7月に行う予定だという。(取材・文:中山治美)
映画『メイクルーム』は5月9日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開