ウディ・アレン、映画を作るのは恐ろしい現実から気を紛らわせるため
第68回カンヌ国際映画祭
現地時間15日、第68回カンヌ国際映画祭で非コンペティション部門に出品されている映画『イラショナル・マン(原題) / Irrational Man』の公式会見が行われ、巨匠ウディ・アレン監督(79)が人生に対する悲観的な発言を繰り返して会場を盛り上げた。会見には同作ヒロインのエマ・ストーンとパーカー・ポージーも出席した。
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映画作りは人生における疑問を解決するのに役立つかと聞かれたアレン監督は、「恐ろしい現実についてのポジティブな答えなんてない」とコメント。「人はみな行き当たりばったりの世界に生きていて、意味のない人生を送っている。そして作り上げた全てのものは、太陽が燃え尽き、世界が終るときに消え失せる。どんなに僕らがシェイクスピアの作品やベートーベンの音楽を愛したって、全て失われるんだ。そんな現実に対処する唯一可能な方法は、気を紛らわせること。映画を作ることは素晴らしく気を紛らわせてくれる」と自身が映画を作る理由を明かした。
さらに「どんなことで気が紛れるのかといえば『エマとパーカーのシーンをうまく撮れるだろうか?』と考える。これは解決することができるささいな問題だ。もし解決できなかったら悪い映画になるが、死ぬわけじゃない」と説明。それはエマやパーカーにもいえるといい、「もし彼女たちがこの映画にキャスティングされていなかったら、家か、もしくはビーチに座って考えてしまっただろう。『人生って何なの?』『わたしは年老いて、死んで、愛する者も死んでしまうだろう』『エボラ出血熱に感染してしまうのかしら?』って」とまくし立てて会場を沸かせた。
アレン監督にとっては映画館で映画を観ることも気を紛らわせてくれるという。「フレッド・アステアの映画を1時間半観ている間は、自分の死、衰え、遠い将来年寄りになるということを考えなくて済む」とアレン節をさく裂させていた。
『イラショナル・マン(原題)』は、人生に意味を見いだせない哲学の教授エイヴ(ホアキン・フェニックス)が、常人には理解できないある行動を取ったことで生きる喜びを取り戻すも、その選択が次第に自身に跳ね返ってくるさまをブラックに描いたミステリー。(編集部・市川遥)
第68回カンヌ国際映画祭は24日まで開催