RADWIMPS野田、俳優デビューに万感の思い「美しく幸せな時間だった」
来月6日に公開される映画『トイレのピエタ』で俳優初挑戦にして主演を務めた人気ロックバンド・RADWIMPSの野田洋次郎がインタビューに応じた。主人公・宏に自身の死生観がシンクロし、運命すら感じたという野田は「時にはぶつかり合いながら、いい映画を作りたいという熱い思いをみんなで分かち合えた。それがとても美しく、幸せな時間でした」と俳優デビューを万感の思いで語った。
本作は、手塚治虫氏の病床日記を基に、『ピュ~ぴる』の松永大司が監督・脚本を務めた青春ラブストーリー。画家の夢に破れ、末期がんを宣告された宏(野田)と、心に傷を持った勝ち気な女子高生との純愛を軸に、生きることの尊さを浮き彫りにしていく。ヒロインの真衣役には若手注目株・杉咲花を迎え、そのほかリリー・フランキー、市川紗椰、岩松了、さらには野田のファンであることから出演を快諾した大竹しのぶ、宮沢りえ、佐藤健ら豪華キャストが名を連ねる。
松永監督からオファーを受けたとき、野田が一番気に掛けたのはバンドメンバーの反応。「僕にとってバンドが最優先。メンバーが嫌だといえば絶対にやらないと決めていた。でも、みんなに脚本を読んでもらったら、『面白い、観てみたい』と快く了承してくれた」。完成した作品もいち早くメンバーに観てもらい、「感動したよ」という声を聞いたときは、心から安堵(あんど)したという。
一方、プライベートでも親交のある大竹、宮沢、佐藤らとの共演については、「僕が映画に出ると言ったら、学園祭のノリでみんな『出たい!』と言ってくれて。でも、いざ現場に入ると、役者のすごさを思い知りました。例えば、両親役の大竹さんと岩松(了)さんが病院に宏を見舞いに来るシーン。『親ならもっと宏に食らいつくはず』という大竹さんの指摘で脚本が全て変わり、リアリティーを持たせるためにエチュード(アドリブ)風に撮ることになったんです。大御所の役者さん2人を相手に即興をするのは何ともシビれる体験でした」と述懐する。
かく言う野田も役に入り込み過ぎて、宏が死のふちに追い込まれていく撮影終盤は、「精神的にやばかった」という。「本当に死にたくないという気持ちが芽生えた」と語るように、宏が憑依(ひょうい)した野田は、撮影後も苦悩を引きずることになる。エンディングに流れるRADWIMPSの「ピクニック」。これは、本作をイメージした楽曲であると同時に、宏を断ち切るために野田が書き下ろした渾身(こんしん)の1曲。「今回は素晴らしい経験でした。役者はまた小さな奇跡が起これば」。全身全霊で映画に挑んだ野田にとって、今は音楽が処方箋のようだ。(取材:坂田正樹)
映画『トイレのピエタ』は6月6日より新宿ピカデリーほか全国公開