日本人のブロードウェイ俳優ジュリアン・スィーヒが語る演技への思い
ブロードウェイの舞台で活躍する俳優ジュリアン・スィーヒが、演技への思いを語った。
父親ガイ・スィーヒと母親で女優の水沢アキのもと生まれたジュリアンが、演劇に興味を持つようになったのは「(母に連れられ)小さい頃にスタジオや舞台裏を見てきましたが、本格的に演技を学ぼうと思ったのは、アメリカのブラウン大学3年時に受けたブロードウェイミュージカル『春のめざめ』のオーディションでした。(後にテレビシリーズ『Glee』でブレイクする)リア・ミシェル主演のミュージカルですが、僕は最終選考で落ちてしまったんです。でも、演出のマイケル・メイヤーが『君は才能があるが、まだ(演技の)テクニックが足りない、テクニックを磨きなさい』と言ってくれたのがきっかけでした」と語った。ジュリアンは、その後ニューヨーク大学大学院で本格的に演劇を学んだそうだ。
最初のプロの仕事はアメリカではなかったそうだ。「大学院2年目の夏に、日本の舞台『MITSUKO~愛は国境を越えて~』でヒロインの息子リヒャルトを演じたのが初舞台でした。その後大学院に戻って卒業公演をニューヨークとL.A.で行い、ニューヨークでエージェント、L.A.ではマネージャーを探していました。卒業後、ウィリアムズタウンというシアターフェスティバルに参加し、それがアメリカでの初のプロの仕事で、その時に俳優労働組合にも入りました。その後も、東宝のミュージカル『RENT』に出演し、これから仕事が増えると浅はかにも思っていました。ところがニューヨークでなかなかオーディションに受からず、ラーメンの『一風堂』で1年ほどアルバイトをしていました」と振り返った。
その後、エリザベス・オルセン共演のオフブロードウェイの舞台「ロミオとジュリエット」のロミオ役を引き受けることになる。「もともとはティボルト役のオーディションでしたが、その2次オーディションでは、自分の役以外にもう2役の準備をしてこいと言われたんです。その時はパリス(貴族の青年)、ベンヴォーリオ(ロミオの友人)役に挑戦しました。ところが、数週間後にロミオ役の俳優が降板してしまい、急きょ僕に白羽の矢が立ちました。きっとオーディションで3役をうまくこなせたことが決め手になったんだと思います」と、実力で役を勝ち取ったようだ。
そんな彼が次に任された仕事は、演劇界の最高峰トニー賞のレポーターだそうで、今後の活躍がますます期待される。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)