日米に“陵辱”されてきた沖縄の歴史…アメリカ人監督が見つめた戦後の現実
戦後70年、日米に翻弄(ほんろう)され続ける沖縄の現実を描くドキュメンタリー『沖縄 うりずんの雨』の特別上映会が10日に都内で行われ、メガホンを取ったジャン・ユンカーマン監督が、「沖縄の本当の思いは、長い歴史の根っこを見ないとわからない。根本には、日米双方の沖縄への差別的視線があるのでは」と沖縄への思いを語った。イベントにはジャーナリストの野中章弘氏も出席した。
太平洋戦争末期の沖縄戦を生き抜いた日米元兵士や、集団自決で生き残った沖縄住民の証言、性暴力事件の加害者である元米兵へのインタビューなどを積み重ね、戦後のアメリカ占領統治から日本返還、そして現在の辺野古への基地移設問題につながる沖縄の真実に迫る本作。
監督は沖縄との出会いを、「大学卒業後、半年滞在したのが最初。独立した伝統文化に感動し、40年の付き合いです。最初に、なぜこんな小さな島に米軍の大きな基地が集中しているのかと驚き、これでいいのかと思った」と語り、製作の出発点を明かす。日本の戦後に関心を持ち続けており、過去には『老人と海』『映画 日本国憲法』など日本をテーマにした作品を多く手掛けてきた。
「ペリー提督が浦賀に行く前に那覇に寄港し、琉球王国を占領して基地を作ったことは知られていませんが、アメリカの沖縄に対する態度は今も変わっていない」という監督。「戦後も米軍は沖縄を『戦利品』と捉え、特権があると感じている。米兵レイプ事件が頻発する理由でもあります。一方、日本政府からも『国益のために沖縄に我慢してもらって』とか『安保関係の約束があるから基地は仕方ない』という声が出る。自分に特権があると考える点では同じ。作中で『陵辱(りょうじょく)』という言葉を使いましたが、政府の態度もこの言葉にあたる」と力を込めた。
続けて、「沖縄の問題は日本の問題だし、アメリカの問題」と続けた監督は「先月、辺野古移設反対で那覇で3万5,000人、東京で1万5,000人が集まった。一人の意思表示は小さくても、問題を動かすはず」と関心の高まりに希望を寄せ、「わたしも本作をアメリカで公開したい。壁は高いですが」と力強い意欲を示した。タイトルの「うりずん」は、草木が芽吹く3月~5月の時期を指す沖縄の言葉。沖縄では10万人が亡くなった沖縄戦の記憶と重なる。(取材/岸田智)
映画『沖縄 うりずんの雨』は6月20日より東京・岩波ホール、沖縄・桜坂劇場ほか全国順次公開