小日向文世、良い人役が重荷になることもあった
映画『HERO』インタビュー
2001年、そのドラマの放映が、俳優・小日向文世のその後を大きく変えた。彼にとって『HERO』とは? 最新映画公開を前に語った。
連続ドラマは年間4クールあるが、小日向はドラマ「HERO」以降の14年間、少なくとも毎年2本は出演し続けている。「ありがたいことに、あれから今に至るまで連ドラの出演がなんだかんだ続いています。それはやっぱり『HERO』の影響力なんです」。
抜てきのきっかけは前年の舞台「オケピ!」(作・演出:三谷幸喜)だった。この公演には本シリーズで雨宮舞子を演じた松たか子も出演していた。「脚本を読んであれこれ工夫しました。末次さんは、ちょっと姑息な人というイメージ。仕事はできないんだけど、仕事できる人に対して妙に嫉妬(しっと)したりして。小市民ですよね」。
小日向が体現した末次隆之事務官は、愛すべきキャラクターとしてお茶の間に浸透。小日向=末次がパブリックイメージになった。「その後は、良い人役が続いたので、一時重荷になることもありました」。しかしその一方で、視聴者を裏切ることもできたという。「末次さんが逆に振り幅にもなる。『末次さんを演じていた人が、こんな怖い役やっているの?』とか『え? どっちが小日向さんなの?』と言われるのがうれしいですよね。以前は(末次のイメージから)初対面でも笑顔で接してくれる人が多かったんですが、最近はそうじゃない。北野武監督の映画『アウトレイジ』を観たからなのかな。僕のこと、怖い人だと思っているんじゃないかな(笑)。だから今、またこうして末次さんやれるのはうれしいです」。
末次はすっかり肌に染み込んでおり、「『HERO』やっていると、脳みそがツルツルになっていくような」と笑う。「末次さんを演じていると、控室でも城西支部のメンバーにツッコまれるんです。みんなどこか役そのままのような……。そうやって役を維持しているような気もしますね。それは作品をチーム一体で作っていこうという共通の思いが大前提だから。木村(拓哉)くんがそれを大事にしているってことも、みんなすごくわかっているし」。それぞれが小日向のようにキャラクターと関係性を大事にしている『HERO』チーム。その結束力を、映画で体感したい。(取材・文:相田冬二)
映画『HERO』(2015)は7月18日より全国公開