木村拓哉主演『HERO』はこうして作られた!脚本家・福田靖が明かす
映画『HERO』インタビュー
鈴木雅之監督と並ぶ『HERO』シリーズの生みの親で脚本家の福田靖が、最新作の秘密を明かした。何が『HERO』を『HERO』として成立させているのか。まず話はシリーズ開始当初にさかのぼる。
「僕は、2001年のドラマ『HERO』でやっと脚本家として食えるようになったんです。最初にこのチームに呼ばれたときに言われたのは『事件は起きるけど、あくまでも検事と事務官の話なのだ』ということ。お客さんが途中で、犯人わかったとか、トリックわかったとか、そういうことすらナンセンスなドラマにしなければいけない。このことは今でもキープし続けていますね。そのためにはバラエティーに富んでいなければいけないし、柔軟な発想も必要。くだらないセリフが書けたときのほうが『自分もあと10年は脚本家としてやっていける』と思う(笑)。感動的なことって、頑張ればできるんですよ。でも、そこをいかにハズしていくか。それが『HERO』ですから」。
本作が国民的な人気を獲得してからは、検事志望の若者が増えた。法曹界にもこの作品のファンは多く、作品に協力してくれるようになった。「『あれは絵空事』と本職の人たちに笑われるものにはしたくないから、助かります。ただ、話を聞けば聞くほど、逆にふざけにくくなりますよね(笑)。難しいことを優しく解きほぐして、掘り下げて楽しくするのが自分の作業。それは今でも難しいですが、うまくいったときの醍醐味(だいごみ)も感動も経験していますから、やりがいがあります」。
例えば、最新作『HERO』(2015)で久利生公平(木村拓哉)が麻木千佳(北川景子)に言う「いまのオレのパートナーはおまえだろ」は、シリーズの核心を突く名ゼリフだ。「木村拓哉という人が演じるということが大前提にあります。ああいうときは木村さんが持っている価値観を想像しながら書きますね。シーズン2で『オレたち、仲良しグループじゃない』と言い切るシーンがありましたけど、わかり合っているけどベタついていない、というか。久利生ってゴチャゴチャした感情に距離を置いて、普通のことを当たり前に言うんですよ。それが結果的に、人によっては深読みにもつながる。そうなっていればいいですね」。笑えるのに、真剣。『HERO』ならではのポリシーは、新作でも生き生きと躍動している。(取材・文:相田冬二)
映画『HERO』は7月18日より全国公開