木村拓哉は芝居を楽しんでいる!松重豊が見た大人の現場とは
映画『HERO』インタビュー
映画『HERO』(2015)で、東京地検城西支部部長・川尻健三郎を快演した松重豊が、「役者にとっての楽しい現場」という本シリーズの魅力について、そして俳優・木村拓哉の芝居について語った。
シーズン2から登場した川尻部長は、ここぞというときにキレてしまう。最新作『HERO』でもそんな川尻の姿が見られるが、「本来キレてはいけない大前提なのですが、毎回のようにキレてしまう(笑)。タブーを犯してしまうフィクションと、検察という世界のリアリティー。そのせめぎ合いが痛快ですよね」と笑う。
昨夏からの加入とはいえ、撮影現場には「いい芝居を作るコミュニケーションがあった」という。「リアルに、人間と人間の気持ちの流れを大事にしていく。心のキャッチボールができる現場でした。木村くんを筆頭にしたチームワーク。小日向(文世)さんの愛嬌(あいきょう)とか、八嶋(智人)くんのスピードとか、(正名)僕蔵くんの朴訥(ぼくとつ)とした中での意外とセリフの軽妙な部分とか。そういう持ち味みたいなものを、それぞれがプロフェッショナルとして出し合っていく。その人が持っている特性がどんどん作品に厚みを生んでいく。その連鎖がすごくうまくいっていたと思います」。
中でも木村との出会いは大きかったそうで「木村くんは、自分で芝居を『こういうものだ』と決め付けてスタートしていない。ちゃんと場所を見て、小道具を見て、ほかの俳優さんの位置関係を見て、最初のセリフを言った人の音量とトーンを聞いて、反応していく。つまり俳優部の基本を、木村くんは一つもおろそかにしていないんです」と絶賛する。そしてそれを木村自身が楽しんでいると松重は続ける。「僕もそういう芝居が大好きなんです。本番で、セリフのやりとりをしているときが一番楽しい。それが本当の意味で、役者にとっての『楽しい現場』。この仕事が好きなんですと言える根拠になるような、成熟した大人の現場でした」。芸達者たちが心底楽しんだ「舞台」。観客にとっても間違いなく、娯楽の醍醐味(だいごみ)が待っている。(取材・文:相田冬二)
映画『HERO』は全国公開中