役所広司、戦争を終わらせるのは難しい…外国人記者に向け思い語る
俳優の役所広司と原田眞人監督が3日、有楽町の日本外国特派員協会で行われた映画『日本のいちばん長い日』記者会見に出席し、戦争に対する思いを外国人記者たちに向けて熱く語った。
半藤一利の傑作ノンフィクションを映画化した本作は、第2次世界大戦末期、戦争終結のために戦った人々を描く歴史大作。この日の会見場には150名近い記者が詰めかけ、海外での関心の高さをうかがわせた。同作について原田監督は「1945年は(自分の)父が19歳。彼は九州の最南端、知覧で塹壕(ざんごう)を掘っていました。昭和天皇が戦争を止めなかったら、きっと彼は犠牲者として亡くなっていた。そうするとわたしもこの場にいなかったと思う」と英語でスピーチ。
そして原田監督は、外国人記者から「これは優柔不断のドラマ。戦争で負けが決まっても、(認めずに)ディベートばかり。これは日本人の文化なのか」という質問が飛ぶと、「安倍政権を見てもわかる通り、日本人の国民性です。国立競技場(の問題)を見てもそう。話し合っても全く決まらない」とバッサリ。一方で「ただ、この時代は日本人に負けたという意識はなかった。(劣勢であっても)本土決戦までいかないと(勝敗は)わからないという意識があったと思います」と付け加えた。
一方、同作の海外展開について尋ねられた役所は「戦争を始めるのは簡単だけど、終わらせるのは本当に難しい。シンプルなメッセージですが、それは海外でも受け止められるんじゃないかと思います」と返答。原田監督も「まさしくそう。9月くらいから海外の映画祭にトライしていきたいと思っています」と意欲を見せた。
この日は戦争当時の日本について「アメリカだけでなく中国とも戦っていたが、それについてどう思う?」という質問が飛ぶ場面も。原田監督は「僕はどう思ったかというより、(映画監督の)小津安二郎さんが、1937年に中国戦線に行った時のことを日記に書いていて……」と切り出すと、「そこには、最前線に赴く日本兵は酒臭かったと書かれていて。その後に南京大虐殺が起こった。帰国してから結局、小津さんは戦争を描いた作品を作ることがなかった。戦争を国家的見地から語れない何か苦しさがあったんですね。だから僕は小津さんの遺志を継ぎたくて研究をしているし、今回の映画のラストシーンにも影響している」と付け加えた。(取材・文:壬生智裕)
映画『日本のいちばん長い日』は8月8日より全国公開