紀里谷和明監督がハリウッド進出を果たしたワケ…10年間を振り返る
卓越した映像センスで一世を風靡(ふうび)した『CASSHERN』から10年、映像に一切の妥協を許さない紀里谷和明監督を取り巻く環境は彼自身を苦しめ続けた。10年を経てようやくハリウッドという製作環境を探し当てた紀里谷監督は、果たして彼の真骨頂を発揮できたのだろうか。彼が背負い続けてきた“おもり”はどのようなものだったのか、最新作『ラスト・ナイツ』の公開に先駆け、独占取材を敢行した。
映画『ラスト・ナイツ』でハリウッドデビューを果たした紀里谷和明監督。しかし、ハリウッドで映画を撮ることを夢見ていたわけではないという。「みんな勘違いしているけれど、僕は自分が撮りたいものを自分のイメージ通りに撮りたくて、それができる環境が日本の外にしかなかったというだけなんです」。
本作はとある国の封建社会を舞台に、君主への揺るぎない忠誠心を持つ誇り高き騎士たちが、不正にまみれた権力者に立ち向かっていく姿を描いた感動のエンターテインメント。主演には、『クローサー』などのイギリス出身の演技派クライヴ・オーウェンと、アカデミー賞俳優のモーガン・フリーマンが名を連ねている。紀里谷監督は「『CASSHERN』『GOEMON』でこつこつとやってきたことがようやく実を結んで、僕のところに奇跡的にこの素晴らしい脚本が届いた。クライヴもモーガンもこの脚本を気に入ってくれていて、少し時間がかかりましたが、最終的には出てくれることになりました」と語る。
「『CASSHERN』のあの世界観を6億円の製作費で成立させるにはCGでやるしかなかった。『GOEMON』も最初はロケでやりたかったけど、予算的に無理だからCGでやることになって」と“CG大好き監督”のイメージを否定すると、「そういう意味では今回、CGではない領域で初めてやりたいことができましたね」と本意を明かした。
さらに「自分の作りたいものを作れないと僕は死んでしまう」と映画監督としての思いを告白。「『CASSHERN』でまがりなりにも自分のやりたいことをやり始めちゃった僕は、もうそういう生き方しかできない。でも、そのために多大な犠牲を払い、あらゆるものを捨てた。冗談抜きで死のうと思ったこともあるし、その苦しみは普通の人にはわからないと思います」とその壮絶な10年間を振り返った。その紀里谷監督の命懸けの熱い思いが『ラスト・ナイツ』に凝縮されている。(取材・文:イソガイマサト)
映画『ラスト・ナイツ』は11月にTOHOシネマズスカラ座ほか全国公開