『火垂るの墓』では戦争は止められない…高畑勲監督、辺野古基地移設問題の抵抗運動にエール
スタジオジブリの巨匠・高畑勲監督が21日、都内で行われたドキュメンタリー映画『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』公開記念トークショーに三上智恵監督と共に来場し、沖縄県・名護市辺野古の基地移設問題で抵抗運動を続ける人たちに対する思いを語った。
アメリカ軍基地の移設候補地となっている辺野古で、反対派の人々が抗議活動を行う姿を追った本作。公開に際して高畑監督は「どんなにひどい仕打ちをされても、怒っても、常にユーモアと笑いを忘れない沖縄の人々のたくましい“人間力”が心に迫る。こんなに生き生きと体を張っているのに、辺野古の新軍事基地作りは“粛々”と進む。見ているうちに、本土の私たちが連帯しないでよいのか、という思いがこみ上げる」というコメントを寄せている。
壇上に立った高畑監督は「(三上監督の前作)『標的の村』もそうでしたが、こういう映画を作ってくれて本当に感謝しています」と切り出すと、「われわれは沖縄で具体的に何が行われているのか。現実にはあまり知らないわけなので、突きつけられた思いでいっぱいです」としみじみ。
高畑監督とは以前、映画祭などで対面したことがあるという三上監督は、「(高畑監督に)『火垂るの墓』では戦争は止められないんだよと言われ、ビックリしたんです。わたしを励まそうとしてだと思うんですが、あなたが作るようなドキュメンタリーなら戦争を止められるんだから、頑張りなさいと言われて。映画が作れなかった時期も、それがわたしを支える言葉になった」と述懐。
さらに三上監督は、土地開発をめぐりタヌキたちが抵抗運動を続ける高畑監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』について「今回、改めて観直してみて、あれこそ沖縄で戦っている人と同じだと思った。今こそ観るべき映画です」と力説。高畑監督も「当時は環境問題の映画だといわれてきました。もちろん具体的に描いたわけではないですが、確かにそういう側面はあります」とその意見に同意し、「沖縄の人が、アメリカの基地をなくしたいという思いは僕も同じなので、一緒に向かいたいと思います」と沖縄の基地問題で戦う人たちにエールを送った。(取材・文:壬生智裕)
映画『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』はポレポレ東中野ほか公開中