奥田瑛二、昔の前張りはガムテープだった
俳優の奥田瑛二が12日、テアトル新宿で行われた映画『赤い玉、』初日舞台あいさつに出席、前張りにまつわる切ない思い出を披露し、会場を沸かせた。この日は不二子、村上由規乃、花岡翔太、土居志央梨、柄本佑、上川周作、高橋伴明監督も来場した。
本作は鬼才・高橋監督が、『愛の新世界』以来およそ20年ぶりに挑んだエロス作。大学で映画撮影を教えている映画監督の老いと性に対する葛藤などを描き出す。実際に大学で教壇に立つ高橋は「今の学生は性表現から逃げている。だったらこちらから現場を作って学生を巻き込みたい」と意気込み。奥田も「世界に冠する日本映画なのに、近年は恥ずかしながらエロスがない。だったら同世代として打破しようじゃないかと思い参加した」と監督の思いに共鳴している様子。
村上が「お乳の出るシーンの時に、学生に奥田さんが『こういうときは下手に男性のスタッフは立たないのがちゃんとしたマナー』と教えていらしたのが印象的でした」と語るなど、エロスの撮影現場は非常に刺激的だったよう。花岡も「この作品はぬれ場が多く、僕も撮影中は前張りをしていましたけど、それを一人で処理するときにすごく切なく悲しい気持ちになりました。こういうのってあるんですかね」と述懐。
するとその言葉に共感した奥田が、「前張りをするとそうなるんですよ。だから今回、僕はすっぽんぽんで演じていますよ」と明かすと、『もっとしなやかに もっとしたたかに』(1979)の撮影で前張りをしていた時のことを振り返り、「撮影が終わって。夜の11時ごろに控室で前張りを取るんですが、ガムテープがこびりついて取れなくて。はさみで切っているときに、切なくてむなしくて涙が出ましたね。だから今後はそういう仕事が来たら前張りをしないで挑んでください」とエールを送っていた。
実生活では義父となる奥田と共演することとなった柄本は、劇中で新作を何年も撮れない映画監督が出してきた企画をむげにゴミ箱に捨てるプロデューサーにふんする。憧れの高橋監督の作品に出ることができて感激したという柄本だが、「最初奥田さんとは、役者でなく監督として仕事をご一緒したので、監督・奥田瑛二がぬぐい去れなくて。憧れの伴明監督と超怖い奥田さんというダブル監督に見られてヒェーという気分。たまに学生スタッフの方が怒られているのを見ると、俺がドキドキしちゃうから怒られないでと思っていました」とコメントし、笑いを誘っていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『赤い玉、』はテアトル新宿ほか全国公開中