カンヌで観客が嘔吐…監督の監禁された実体験が基に 賛否両論の問題作
片思いの女性に異常な執着を示して監禁、食事・排せつ・精神・肉体の全てを管理する破滅的な青年の姿を描いた映画『BLACK ROOM』の公開前夜祭イベントが11日、都内で行われ、本作の企画、製作、監督、主演、編集、脚本、撮影・照明・美術監督を一人で担当した辻岡正人が登壇した。
本作は第67回カンヌ国際映画祭のマルシェ・デュ・フィルム(映画マーケット)で上映されると、賛否両論を巻き起こした。辻岡はカンヌでの上映を振り返り、「カンヌでは140分の長さで観ていただいたんですが、女性の方にとても嫌悪感を抱かれ、途中で嘔吐(おうと)する人までいた。女性受けがかなり悪かったです。男性の人に関しても特殊な癖のある方くらいしかなかなか共感してもらえなかった」と苦笑い。
辻岡は、特殊な状況を映画化した背景には自身の体験があったと明かす。「主人公が女性を監禁するという、その逆パターンを自分自身が経験したことがあったんです。される側の嫌悪感が拭い切れないまま10年が過ぎたけど、人を愛することは一方通行じゃないんだな、いろんな角度の愛があるんだなって気付き始めて、あの人の行動も一つの愛の表現だったのではないかと消化してこの作品を作るところに至りました」と説明。
日本公開版では「もっと観やすい形にしようと思って、さらに編集してわりとマイルドな形に仕上げた」と述べるが、「それでも目を背けたり、嫌悪感を抱かれたりすることもあると思います」と話す辻岡。「どうしても気持ち悪くなる場合は目を伏せながらも、心で感じてもらえたらうれしいです」と訴え掛けていた。
舞台あいさつには共演者の夕樹ゆう、朝霧涼、鈴木悟、池田光正、団時朗、伊藤陽佑、プロデューサーの安隨泰宏も出席した。(取材・文:名鹿祥史)
映画『BLACK ROOM』は9月12日より新宿バルト9ほかにて全国公開