キム・ギドク監督、福島原発事故を題材にした衝撃作を釜山でお披露目 主演は中江翼
開催中の第20回釜山国際映画祭で3日、キム・ギドク監督が日本で撮影した『ストップ(原題) / STOP』がコリアン・シネマ・トゥデイのパノラマ部門で上映され、ギドク監督と本作に出演した中江翼、合アレン、武田裕光が舞台挨拶に登壇し、Q&Aが行われた。
キム・ギドク監督、福島原発事故が題材の新作で日本人キャストとタッグ
本作では、日本の福島原発事故により東京に移住した若い夫妻が、妊娠中の子供を出産するかどうか、政府やインターネットの情報に振り回されながら決断するさまが描かれる。
本作を一人で撮影したという監督の「ゲリラ撮影など大変だったが、制作過程を楽しむことができた」という挨拶に続き、主演の中江が「重いテーマですが、責任を背負うつもりで撮影しました」とコメント。福島に留まり出産する女性を演じた合は「原発に対する不安を表現する責任ある役をいただき感謝しています」と続け、肉屋を演じた武田は「韓国映画に触発され、韓国で俳優をしていますが、韓国の監督による日本を舞台にした作品に出演することができてとてもうれしいです」と流ちょうな韓国語を披露した。
デリケートなテーマについてギドク監督は「芸術家は作品で世界に問題を投げかけます。劇中の夫婦が感じる奇形児への不安は、電気に支配されている怪物のようなこの世界への不安なのです」と語った。続いて聴覚が異常に敏感な子供を登場させた理由を聞かれると「国が住民の声を聞いていないというメタファーです。国が人々の声を聞かないというのは、社会がとても不健全ということだと思います」と答えた。
中江は観客に向かって「あの事件を風化させないために俳優として映画や舞台で残していけば、100年後、200年後にも心で感じてもらえるのではないかと思っています」、合は「私たちの不安がどういうものだったのかを伝えられたらと思っています」と作品に込めた思い、情熱をアピール。武田は「監督から出演依頼を聞いたとき、自分にとって身近なテーマなので客観的に演じるのは挑戦でしたが、完成したこの映画を楽しんでいただけたらと思います」と映画への思いを伝えた。(取材・文:芳井塔子)
第20回釜山国際映画祭は、今月10日まで開催